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米外交国連と仲直りアメリカの立役者
キリスト教福音派の人道活動が、アメリカと国連との協調を後押ししている
アメリカが国連と仲直りをしつつある。ピュー・リサーチセンターの最新の調査によれば、アメリカ人の61%が国連に好感を抱いている(2年前は48%)。その最大の立役者はオバマ大統領だ。
経済制裁下のイラク国民を支援するために国連が実施していた石油・食料交換計画をめぐり、汚職疑惑が浮上したのは5年前。その後、当時のブッシュ政権は国連批判の急先鋒だったジョン・ボルトンを国連大使に任命した。国連本部ビルは10階分不要と断じた男だ。
オバマはその流れを180度変えた。国連大使には大統領選のとき自らの外交顧問を務めたスーザン・ライスを任命。さらにその地位を閣僚級に格上げして、国際協力重視の姿勢を明確にした。どうやら国民もそれに倣ったようだ。
だがオバマのほかにも意外な立役者がいる。キリスト教福音派だ。彼らはここ数年、人工妊娠中絶や同性婚といった政治的な問題よりも、貧困撲滅など人道活動に力を入れるようになっている。
全米で人気のリック・ウォレン牧師は、世界各国のキリスト教会を結んで貧困者への援助や医療活動を行う「平和同盟」を創設。毎週2万人もの礼拝参加者を誇るウィリアム・ハイベルス牧師も、U2のボノが設立した人道団体「ワン」への協力を行っている。
こうした変化に国連も気付き始めている。潘基文国連事務総長は07年、バージニア州アーリントンで福音派の指導者らとの夕食会に出席。「(ミレニアム開発目標を)達成するには、全米福音派協会(NAE)をはじめとする宗教コミュニティーの協力がこれまで以上に必要だ」と語った。
アメリカがさらに国連に接近する可能性もある。米議会は6月、滞納していた国連分担金を99年までさかのぼって支払うことを決めた。さらに9月にニューヨークの国連本部で開かれる気候変動問題首脳会議でも、ホスト役を務めるオバマの活躍が見られるはずだ。
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[2009年8月19日号掲載]