同性婚禁止と戦う米記者の告白
同性のパートナーと結婚した1週間後、カリフォルニア州の住民投票で同性間の結婚が禁止になった。 この出来事で立ち上がった記者の「権利のための戦い」とは
カリフォルニア州住民投票「提案8号」は、私の人生を変えた。
11月4日のアメリカ大統領選投票日まで残り1カ月を切った10月初め。大統領選挙と併せて実施される住民投票で、提案8号への支持が広がっている状況が見えてきた。この提案が可決されれば、カリフォルニア州では同性間の結婚が禁じられる。
私は7年来のパートナーのジェフ・ベクトロフに言った----カリフォルニアの有権者に「誓わせない」と通告される前に、結婚の誓いをしたほうがよさそうだ、と。
私たちは、ウキウキと結婚式の準備を始めた。ロサンゼルスで一番のベーカリーで、3段重ねのモカチップのウエディングケーキを注文。式で流すフランク・シナトラの曲も準備した(「花嫁」うんぬんという歌詞の定番の結婚式ソングは使えないので)。
生花店に行ってコサージュの花を選び、高校時代の女友達にテーブルの飾りつけを頼んだ。ニューズウィークの同僚の映画批評家デービッド・アンセンとその友人のメアリー・コーリーは、私たちの大好きな映画『ティファニーで朝食を』のセリフを朗読してくれることになった。
そして、10月25日。ジェフが母親と一緒に通路を歩き、その少し後ろを私は86歳の父親と93歳の母親に付き添われて歩いた。思いがけずあふれ出しそうになる涙をこらえるために、唇をぎゅっとかみしめた。この日集まってくれた100人の親しい人たちの顔を見ると、みんなのほおにも涙が伝い落ちていた。
私たちには支えてくれる人が大勢いた。それに、大統領選ではバラク・オバマが勝利に向けて突き進んでいた。よもやリベラルなカリフォルニアの住民が私たちの結婚を「伝統的結婚」への脅威とみなすとは、本当のところ思っていなかった。
しかし、私たちは世界が見えていなかった。私たちに「ホモ」と罵声を浴びせる人がほとんどいなくなっただけなのに、社会に受け入れられたと思い込んでいた。
11月4日、カリフォルニアの住民投票で、「結婚は男女間に限る」とする州憲法修正案(提案8号)が可決された。5月の州最高裁判決で認められたばかりの同性婚の権利は再び否定された。
私たちのようにこの数カ月の間に婚姻手続きをした1万8000組の同性カップルは、婚姻が無効になるのではないかと怯えながら過ごしている。