「神童」の能力だが、認知症の老人でもある...AIが人間の医師には「絶対勝てない」理由
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電卓に腕立て伏せはできない
ダートマス大学ガイセル医科大学院およびコンピューターサイエンス学部のトーマス・ティーセン(Thomas Thesen)准教授(神経科学)も、この研究に関してパールと同様の結論を導き出した。
「AIに人間用のテストをやらせるのは、電卓に腕立て伏せをやれと言うのに似ている」と、ティーセンは説明する。「電卓に腕立て伏せができないのと同じく、AIにそうしたテストはできない。だが訓練されたタスクや設計の目的に沿ったタスクでは、能力を発揮する」
しかし、ダヤンのチームの研究は重要な問題を提起した。
ガイセル医科大学院では、デジタルヘルス技術やAIの責任ある使い方を指導している。AIが学生の共感力を養うのに役立つケースもあると、ティーセンは言う。
AIを使い、学生は患者とのやりとりをシミュレーションする。AIは結果を学生にフィードバックし、「患者の痛みにもっと敏感になりましょう」「自由回答形式の質問をもっと投げかけましょう」などと促す。
AIは「共感」を認識しない
だがティーセンのみるところ、あるレベル以上の共感は、AIには決して模倣できない。
「『私のことを気にかけてくれる人がいる』という実感は、患者の行動に大きく影響する。そう思えればこそ患者は医師の言うことを聞くし、信頼関係も深まる」と、彼は語る。「医療をAIに任せたら、そうした効果は消えてしまうかもしれない」