「神童」の能力だが、認知症の老人でもある...AIが人間の医師には「絶対勝てない」理由

THE AI WILL SEE YOU NOW

2025年3月19日(水)14時48分
アレクシス・ケイザー(医療担当)

電卓に腕立て伏せはできない

ダートマス大学ガイセル医科大学院およびコンピューターサイエンス学部のトーマス・ティーセン(Thomas Thesen)准教授(神経科学)も、この研究に関してパールと同様の結論を導き出した。

「AIに人間用のテストをやらせるのは、電卓に腕立て伏せをやれと言うのに似ている」と、ティーセンは説明する。「電卓に腕立て伏せができないのと同じく、AIにそうしたテストはできない。だが訓練されたタスクや設計の目的に沿ったタスクでは、能力を発揮する」


しかし、ダヤンのチームの研究は重要な問題を提起した。

ガイセル医科大学院では、デジタルヘルス技術やAIの責任ある使い方を指導している。AIが学生の共感力を養うのに役立つケースもあると、ティーセンは言う。

AIを使い、学生は患者とのやりとりをシミュレーションする。AIは結果を学生にフィードバックし、「患者の痛みにもっと敏感になりましょう」「自由回答形式の質問をもっと投げかけましょう」などと促す。

AIは「共感」を認識しない

だがティーセンのみるところ、あるレベル以上の共感は、AIには決して模倣できない。

「『私のことを気にかけてくれる人がいる』という実感は、患者の行動に大きく影響する。そう思えればこそ患者は医師の言うことを聞くし、信頼関係も深まる」と、彼は語る。「医療をAIに任せたら、そうした効果は消えてしまうかもしれない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪雇用、2月は予想外の減少 5月利下げ観測高まる

ワールド

トランプ氏、米石油業界幹部と会談 「エネルギー支配

ワールド

ブラジル中銀が1%利上げ、3会合連続 引き締めペー

ビジネス

ロシア株のMSCI指数復帰、楽観的シナリオより遅れ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平
特集:2025年の大谷翔平
2025年3月25日号(3/18発売)

連覇を目指し、初の東京ドーム開幕戦に臨むドジャース。「二刀流」復帰の大谷とチームをアメリカはこうみる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 6
    「気づいたら仰向けに倒れてた...」これが音響兵器「…
  • 7
    ローマ人は「鉛汚染」でIQを低下させてしまった...考…
  • 8
    医師の常識──風邪は薬で治らない? 咳を和らげるスー…
  • 9
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 10
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 5
    失墜テスラにダブルパンチ...販売不振に続く「保険料…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 10
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中