最新記事
考古学

ストーンヘンジに新説...先住民を統合し「祖先・宇宙との絆を祝福する」象徴だった?

2025年3月16日(日)14時20分
アリストス・ジョージャウ(科学担当)

それにしても重い巨石をどうやって運んだのか。ネイチャー論文によると、先史時代のブリテン諸島には広範囲に及ぶ交易網があり、優れた輸送手段が開発されていた可能性があるという。祭壇石は海路で運ばれたようだ。

論文はストーンヘンジの祭壇石とスコットランド北東部に点在する環状列石の祭壇石との類似性を指摘。ストーンヘンジの祭壇石は、スコットランド北東部の住民からソールズベリー平原の住民に同盟の証しとして寄贈されたのではないかと推測している。


ストーンヘンジに祭壇石がもたらされたのは紀元前2500〜2000年ごろとみられている。これはヨーロッパ大陸からブリテン諸島に異文化集団が流入した時期でもある。新参者の流入で先住民の統治の安定性が揺らぎ、それを強化するために祭壇石がもたらされたとも考えられる。

だとしても、先住民の団結の試みはむなしい抵抗に終わったようだ。ストーンヘンジがほぼ現在の形になった紀元前1600年ごろ、先住民の末裔たちはブリテン諸島各地からほとんど姿を消していた。

【参考文献】
Parker Pearson, M., Bevins, R., Bradley, R., Ixer, R., Pearce, N. & Richards, C., (2024) "Stonehenge and its Altar Stone: the significance of distant stone sources", Archaeology International 27(1), 113-137. doi: https://doi.org/10.14324/AI.27.1.13

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀、今週は据え置き 引き続き関税の影響と国内経

ビジネス

米バークシャー、バフェット氏除き取締役は80歳で退

ビジネス

日経平均は続伸、米株の自律反発を好感 半導体株しっ

ビジネス

米食肉工場1000カ所以上の対中輸出登録が失効、5
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自然の中を90分歩くだけで「うつ」が減少...おススメは朝、五感を刺激する「ウォーキング・セラピー」とは?
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴された陸上選手「私の苦痛にも配慮すべき」
  • 4
    エジプト最古のピラミッド建設に「エレベーター」が…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 7
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 8
    奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」…
  • 9
    鈍器で殺され、バラバラに解体され、一部を食べられ…
  • 10
    20分ごとの急展開に「爆笑」する人も?...映画『教皇…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 10
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中