最新記事
宇宙

8日間のはずが8カ月に...宇宙飛行士の「足止め騒動」で見えた「老舗とベンチャー」の明暗とは?

Stuck in Space

2024年10月1日(火)16時22分
マンディ・タヘリ
ISS滞在8日目を迎えた宇宙飛行士のバリー・ウィルモアとスニタ・ウィリアムズ

ISS滞在8日目を迎えたウィルモア(左)とウィリアムズ(6月13日) JSC/NASA

<ボーイングの宇宙船スターライナーで国際宇宙ステーションに到着するも、「足止め」されている2人の宇宙飛行士。帰りはイーロン・マスクの「スペースX」を頼ることになったが──>

6月5日に打ち上げられた米航空機大手ボーイングの宇宙船スターライナーで国際宇宙ステーション(ISS)に到着した宇宙飛行士2人が足止めされている問題で、NASAは彼らを来年2月に帰還させると発表した。

スニタ・ウィリアムズとバリー・ウィルモアは当初、6月14日頃に地球に帰還する予定だった。だが宇宙船にヘリウム漏れが見つかり、さらにスラスター(推進装置)の一部が故障。原因究明のため帰還は再三延期されていた。


NASAのビル・ネルソン長官は8月24日の記者会見で、2人の帰還にはスターライナーではなく、イーロン・マスク率いる宇宙ベンチャー、スペースXの有人飛行ミッション「クルー9」を使用すると発表した(スターライナーは9月7日に無人で帰還した)。

ネルソンはさらに「われわれは過去に過ちを犯した。情報を上げにくい体質が災いし2機のスペースシャトルを失った」と語った。「宇宙飛行は最も安全で最も日常的なものでもリスクを伴う。試験飛行はそもそも安全でも日常的でもない」

当初の滞在予定を延長し、「2人をISSに残してボーイングのスターライナーを無人で帰還させる決定は安全性を重視した結果だ」。

NASAのジム・フリー副長官も同じ意見だ。「私たちは学習する組織だ。今回の取り組みにも学ぶところがあるはずだ。決定は容易ではなかったが、間違いなく正しい」

「安全確保」に一致協力

スターライナーのトラブルを受けて、NASAは次のISSのミッションを延期し、宇宙船をISSにドッキングしたまま原因究明に努めてきた。スターライナーの「スラスターの問題は非常に複雑だ。帰還時に正常に動作するか、温度がどのくらい上昇するか、予測は難しい」と、NASAの商業乗組員プログラム責任者であるスティーブ・スティッチは語った。

ボーイングは「今後もボーイングは乗員と宇宙船の安全に注力する」と説明した。「NASAの決定どおりミッションを遂行し、宇宙船の無人帰還を安全かつ成功裏に実現する準備を進めている」

一方、スペースXのグウィン・ショットウェル社長兼COOは8月24日、「できる限りNASAをサポートする用意がある」とX(旧ツイッター)に投稿した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中