生成AIに関する、楽観論でも悲観論でもない「真に問うべき質問」
ISSUES 2024: ARTIFICIAL INTELLIGENCE
現代のAIモデルは、膨大なデータを学習して構築される。それが何百時間分ものクラシック音楽であれ、より定量的なデータであれ、AIのアウトプットを有意義で知的なものにするのは、人間のインプットなのだ。この人間とテクノロジーの共生関係を維持したとき初めて、AIの進歩を、人間にメリットをもたらすものにできる。
AIは経済活動の効率化から、世界中で評価されるアート作品の制作まで、使う人の目的達成を助けるユニークな能力を持つ。デジタル化が進む世界でAIの役割が拡大するのは間違いないが、そこで必要になるのは人間とマシンの両方を尊重し、高め、最適化する共存戦略だ。
『ドボルザーク・ドリームズ』は、こうした概念を体現するものだ。人間の独創性と優れた表現を中核に据えて、AIで偉大な音楽家のレガシーを抽出し、合成し、拡張した。その結果生まれたインスタレーションは、マシンの「ハルシネーション(もっともらしいウソ)」ではなく、人間とマシンの共進化を示している。
『ドボルザーク・ドリームズ』を実現するためには、人間対人間、人間対マシンといった議論をひとまず忘れる必要があった。だがそのおかげで、テクノロジーの進歩にも、現代アートの発展にも寄与できた。いま私たちに必要とされているのはテクノロジーの革命ではなく、テクノロジーに対する人間の態度の革命だ。
AIの可能性を断固信じる必要はないし、断固批判する必要もない。人間の進歩は、人間同士、そして人間とマシンの協働から生まれる。そして未来に対するオープンな姿勢と、歴史を評価する姿勢を組み合わせるという意味では、アーティストも投資家もイノベーターも、AI革命に等しい役割を担っている。
レフィク・アナドル
REFIK ANADOL
メディアアーティスト。カリフォルニア大学ロサンゼルス校デザインメディアアート学部で教鞭も執る。
カレル・コマーレク
KAREL KOMÁREK
チェコの実業家。投資会社KKCGの創業者で、ドボルザーク・プラハ国際音楽祭の共同創始者。
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