最新記事

動物

「犬は飼い主に忠誠心をもつ」は間違い 研究で判明した「犬が本当に考えていること」

しょっちゅう食べてばかりいるとか、もらうだけ食べるのが"浅ましい"とか"意地汚い"と感じるのは人間だけです。動物にとって食べ物を見つければ口にするのは別に浅ましいことではないし、食べたばかりでも、もらったらまた食べるのは犬の本能なのです。

満腹中枢がほとんど機能していないということは、脳が「もう十分だ」という指令を出さないということ。だから犬は「もうけっこう」なんて遠慮はしないし、あげたらあげるだけ食べるのが普通なのです。

野生ではいつ食べ物にありつけるかわからないので、いまある食べ物を一気に丸呑みし、大量にお腹にため込もうとしていました。その名残で、犬はごはんをあげるとほとんど噛まずに呑み込むようにして食べます。

猫はごはんを少し残したり、数度に分けて食べることが多いのですが、犬は出されたものを一気に食べてしまいます。そのため、留守番させるときなど、器に食べ物を出しておくと一度で全部食べてしまうので、自動給餌(きゅうじ)器を利用したり、遊びながら食べ物が得られるおもちゃ(コングなど)を与えるなどの工夫が必要になります。

動物を飼うことには向いていない人の特徴

ここまで述べたように、人間と犬は感覚や脳の働きが大きく異なります。

そこを理解せずに、犬をまるで同居人のように擬人化して、人の感覚や「人間の物差し」で行動を判断してしまうと、さまざまな誤解や人の勝手な思い込みを生んでしまいます。

大事なのは、人間側の一方的な思いや価値観だけで犬の行動を見ないことです。

こうしてほしいのに、なぜできないの?
何度も教えているのに、なぜ覚えないの?

犬と暮らしていれば、そのような不満が生じるのは当たり前なのです。

人間側の都合ばかり押し付けたい人は、はっきり言って動物を飼うことには向いていません。

犬はあくまで動物で、人と同じような考え方や行動はしません。

人間の価値観や常識(=人間の物差し)で犬の行動を見てしまうのもやはり間違っています。

あらためてその点を認識し、犬の特性を尊重する姿勢を持てば、しつけやトレーニングをする際にもよけいな悩みが減ってくると思います。

「犬は主人に対して忠誠心を持つ」は幻想

昔から犬は主人思いの動物とされて、「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」などと言われてきました。

しかし、ここにも人間の勝手な思い込みが入っている気がします。

ただ飼えばいいわけではなく、飼い主が本能的欲求を満たしてくれる(十分な食事、安心な寝床、一緒に遊んでスキンシップをしてくれるなど)ことがなければ恩は感じてくれません。

「動物なのだから、食べ物をあげていれば懐いて恩を感じるだろう」と思うかもしれませんが、それだけなら、よそでもっとたくさんごはんをくれる人を見つければ、そっちへ行ってしまいます。

同様に「犬は主人に対して忠誠心を持つ」というのも、ほとんどの場合、人間の思い込みです。これも親和性の高い飼い方をしない限り、ただの幻想と言っていいでしょう。

幸せホルモン(オキシトシン)に満たされるような、安心と幸せを感じる関係にあれば、親愛の情や絆を感じさせる行為がみられることはあります。

実際、「飼い主に危険が及ぶのを察知して知らせてくれた」とか、「か弱い子どもを懸命に守ろうとした」といった感動的なエピソードには事欠きません。

それを忠誠心と呼ぶのは自由ですが、犬は犬社会でも、仲間に危険を警告したり、犬同士で助け合う行動は普通にみられます。それを飼い主に対しても行っているだけだ、というドライな見方もできるのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国憲法裁、法相の弾劾訴追棄却 職務復帰 

ビジネス

日経平均は急反発、米関税90日間停止を好感 上昇幅

ビジネス

ゴールドマン、中国GDP予測を下方修正 米関税引き

ワールド

韓国大統領選、李在明氏が立候補を正式表明 世論調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中