最新記事

テクノロジー

米で審議中のIT改革法案、GAFAは「嘘」をついている

BIG TECH CRIES WOLF

2022年6月8日(水)11時45分
アレックス・ハーマン(エコノミック・セキュリティー・プロジェクト政務担当ディレクター)
公聴会 ジェフ・ベゾス

IT業界の改革法案は超党派の支持を得ている(写真は米下院司法委員会の反トラスト法に関する公聴会にリモートで参加したアマゾンのジェフ・ベゾスCEO、2020年) GRAEME JENNINGS-POOL-REUTERS

<グーグルやアマゾンは新たな規制により「便利なサービスがなくなる」と脅すが、むしろ業界を透明にして消費者を救う正攻法だ>

IT業界とその競争の改革案として、ここ10年で最も実質的とも言える「米国イノベーション・選択オンライン法案(AICO)」が上院で審議中だが、中間選挙のカオスに全てがのみ込まれる前に通過するかどうかは微妙なところだ。

グーグルやアマゾンなどビッグテックは、この法案が自分たちの収益を脅かすことを阻止しようと、ロビー活動に精を出している。

しかし、改革に対する超党派の支持を切り崩すことができず、法案の内容について誤った情報を広めている。混乱を起こし、時間切れになるまで法案の投票を遅らせようという戦略だ。

ビッグテックの主張の1つは、この法案によって、みんなのお気に入りの便利なサービスがなくなるというもの。アマゾン・プライムやグーグルマップが消滅するという。

しかし、法案を読んでみれば、これらのサービスは生き残るだけでなく、明らかにより良くなるはずだ。

例えば、法案はアマゾンに対し、「競争を著しく阻害する」方法でサードパーティーの販売業者(マーケットプレイスの出品者)より自社製品を優遇することを禁止する。

つまりアマゾンはその巨大な力を使って、アマゾンに依存している中小企業を犠牲にして自社製品やサービスを優先させてはいけない。単純な話だ。

私たちはアマゾンの検索と表示機能を頼りに、探している商品を最良の価格と入手方法で見つけている。アマゾンが検索アルゴリズムを所有しているからといって、自分たちが最も稼げる商品を優遇し、より安く、より適切に、より早く出荷される商品を消費者の目から隠すことは、販売者と利用者にとって不公平だ。

しかし、商品がアマゾン・プライムの対象であることや、アマゾンが提供するお得な価格についてアマゾンが消費者に伝えることについては、法案は禁止していない。そうした情報の提供は競争を阻害するというよりも、むしろ促進する。

ただし、競合他社をトップページから追い出して、消費者が他のより良い選択肢を見ることができないようにしてはならない。

ビジネス面では、サードパーティーの販売業者は、商品を販売するプラットフォームとしてアマゾンに登録する。アマゾンは広告やフルフィルメント(倉庫保管や出荷、配送などの業務)代行など付加的なサービスを有料で提供する。これらのサービスは商品価格の40%以上になることもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中