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米で審議中のIT改革法案、GAFAは「嘘」をついている

BIG TECH CRIES WOLF

2022年6月8日(水)11時45分
アレックス・ハーマン(エコノミック・セキュリティー・プロジェクト政務担当ディレクター)

従って、アマゾンが自社のプラットフォームへのアクセスを提供する条件として全ての付加サービスの契約を要求することは、権力の乱用に当たるだろう。

自動車の修理業者がエンジンを取り外し、「有料でサウンドシステムを追加しないなら、車は自分で直せ」と言うようなものだ。

法案はこうした強要行為を防止する。付加サービスを提供すること自体は構わないが、プラットフォームへのアクセスを失うと脅して、サービスの購入を強制してはならない。

選択権をユーザーの手に

グーグルマップについても、ビッグテックの主張は真実には程遠い。

法案によると、検索サービスは自社の製品やサービスを、「中立、公平、かつ非差別的」な基準よりも「他の企業のものと比べて有利に」ランク付けしてはならない。

これは、グーグルが自社の検索結果にグーグルマップを含めることができない、という意味ではない。検索エンジンと地図のインターフェースの両方を所有しているという理由だけで、いかなる場合もグーグルマップを検索結果のトップに表示することはできない。それだけだ。

グーグルが(現在のように)検索結果のトップに地図を表示させたいのなら、どの地図サービスをデフォルトにするかという選択権は、ユーザーに与えなければならない。

グーグルマップが常に一番上に表示されるのが好きだという人は、自分でその設定を維持すればいい。同様に、グーグルの検索アルゴリズムが、情報の質やその他の公正な指標に基づいてグーグルマップが最高の地図であると公正に判断した場合は、検索結果のトップに表示することができる。

つまり、ビッグテックが脅すような「破壊的な結末」を、信じるに足る理由はない。法案はむしろ、彼らが占拠している空間を、より公平で、透明で、開かれたものにして、ユーザーにより多くの、より良い選択肢を与えようとしている。

ある企業が検索空間を支配して、経済の全ての分野がそれに依存していても、その特権を乱用して、消費者を犠牲にして私腹を肥やすことは許されない。この原則に従うことがビッグテックのビジネスを破壊することも、消費者の利便性を奪うこともない。

法案は消費者と中小企業を助け、ビッグテックが乱用した信頼を回復する。それが真実だ。

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