経済成長しても「技術はない国」だったはずの中国は、なぜDX大国になれた?
社会が豊かになるにつれ、年々、3K現場での作業員確保が難しくなるなか、中国でも省人化は焦眉の課題。また、坑道内にもインターネットを張り巡らし、監視カメラやセンサーからデータを収集することで、安全確認、人員管理、リアルタイムの生産量把握が可能となる。
鉱山の生死を決めるのはコストだ。たとえ資源を掘り尽くしていなくても、コストが利益を上回れば採掘は続けられない。逆に高騰する安全コストを削減することは、そのまま鉱山の寿命を延ばすことに直結する。
アリババグループが打ち出した、一風変わったソリューションがAI養豚。中国は世界一の豚肉生産国だが、畜産農家の大半は中小零細事業者で、技術力の低さが問題だった。
アリババグループは体に描いたQRコード型の印や声紋認識を使った個体管理、AIカメラによる豚の行動データ取得により、技術のない畜産農家でも効率よく飼育できる仕組みを整備している。
また単なる生産サポートにとどまらず、飼育データを小売店舗と共有することで、いつどこで育てられた豚かというトレーサビリティーを実現することを目指している。
18年のAI養豚発表時にアリババクラウドの総裁(当時)は、豚の行動データを活用することで、「出荷されるまでに200キロも走り回った健康豚」といった新たなブランディングも可能になるとの未来図を示した。生産現場の革新を商品の付加価値に直結させようとするアイデアだ。
長距離トラック版のウーバー
21年6月22日に米ニューヨーク証券取引所に上場した「満幇集団(フルトラックアライアンス・グループ)」は、荷主と長距離トラック運転手のマッチングを行うトラック版ウーバーだ。
対面や電話での交渉という煩雑なやりとりから解放されただけではなく、トラックの空き状況の可視化、取引データによるトラック運転手への信用供与などの関連サービスも広がっている。
DXの第一歩として、チームスやスラックなどのコラボレーションツールを導入する日本企業がようやく増えつつあるが、中国ではバイトダンスのLARK、アリババグループのディントーク、テンセントのウィーチャット・ワークという自国産サービスがシェアを取っている。
ビデオ会議、ドキュメントやカレンダーの共有、タイムカードの打刻、有休や経費の申請、上司の決済などの機能が最初から盛り込まれたオールインワンになっている点や、モバイルインターネット大国だけにスマホファーストの作りになっている点が特徴だ。