超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告
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米国立薬物乱用研究所(NIDA)のノラ・ボルコウ所長は、食物依存研究の草分け的存在だ。
ボルコウは依存症の患者が薬物やアルコールに対して抱くあらがい難い欲求と、肥満の人々の食への欲求の間の共通点に関心を持ち、80年代に研究を始めた。薬物依存の患者と重度の肥満や過食症の人々、それぞれの脳の異常な活動パターンの間に関連性があることを示す証拠が近年、見つかっているとボルコウは語る。
肥満は内分泌疾患だと考える研究者たちは当初、ボルコウの研究を全く認めようとしなかったという。
だが「ニコチンであれ超加工食品であれ、あらがい難い反応、つまり自然な食品ではあり得ないやり方でドーパミン作動性システムを操作する反応を最適な形で引き起こすよう設計されているのであれば、何の違いもない」と、ボルコウは言う。
マウント・サイナイ医学大学院のニコール・アビーナ准教授(神経科学)は2000年代初め、砂糖が依存性のある物質の科学的基準に当てはまるかどうかの研究を始めた。
きっかけは、薬物依存症の治療を受けている人々が、ヘロインを断つより砂糖を断つほうが難しいと語っているのを聞いたことだ。
その結果、動物であれ人間であれ砂糖は過剰摂取と禁断症状、食べたいという強い欲求を引き起こすことが分かった。いずれも薬物依存症ではおなじみの症状だ。
また脳内で、薬物依存症の患者に見られるのとほぼ同じ神経化学的変化や神経画像的変化が起きていることも分かった。
コカイン並みに高い依存性
砂糖の依存性は、超加工食品に含まれる他の材料と組み合わされるとさらに高まる。ラットを使った研究では、砂糖はコカイン並みに依存性が強いとの結果が出た。
「人間の脳は、こうした(超加工食品に使われる新しく)さまざまな材料を、現代人が口にしているくらい大量に処理するようにはできていない」と、アビーナは言う。
超加工食品とたばことの「関係」は、ほかにもある。
80年代から2000年代の終わりにかけ、大手食品メーカーが大手たばこ会社の傘下に入る例が相次いだ。ナビスコは1985年にRJレイノルズに、後にフィリップ・モリスに買収された(現在は独立)。ゼネラル・フーズやクラフトも一時、フィリップ・モリスの傘下にあった。
薬物などが依存症を引き起こす大きな要因の1つは、体内に入ってから脳の報酬系を刺激するまでの時間の短さだ。
食品メーカーを買収した時点でたばこ大手は既に、自社製品がニコチンを脳に送り込むスピードを研究、最適化するという経験を何十年も積んでいた。その知見を加工食品にも応用したわけだ。