その腰痛は大丈夫? 手術で治療すべき腰痛とは
THE CORRECT BACK SURGERY FOR YOU
STEVEDANGERS/ISTOCKPHOTO
<椎間板ヘルニア、腰部脊柱菅狭窄症など、構造が複雑で疾患の種類も多い背骨の異常については、正確な判断とそれぞれの患者にあった治療方法を採用することが重要だ。本誌特別編集ムック「世界の最新医療2020」より>
「背骨の構造」を正しく知っているだろうか。中には背骨を「少し柔軟性を持つ1本の骨」くらいに思っている人もいるようだが、もちろんこれは大間違いだ。背骨のことを正確には「脊椎」と呼ぶ。この脊椎は、首の「頸椎」から始まり、背中の胸椎、腰の「腰椎」、そして骨盤の一部に組み込まれている「仙椎」までをひとまとめにした総称。ひとまとめにされてはいるが、実際には頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎と仙椎それぞれ5個の「椎骨」と呼ばれる骨が複雑に連なって構成されている。
骨そのものは硬質で柔軟性はない。なのになぜ背中を折り曲げられるのか──。それは、それぞれの椎骨が独立していて、それぞれの間に「椎間板」という柔らかい組織が挟まっているから。椎間板が緩衝材になることで、人は前かがみになったり振り向いたりすることができるのだ。
人の脊柱は、どんなに姿勢のいい人でも直線ではない。頸椎はやや前に、胸椎はやや後ろ(背中側)に、そして腰椎は再び前側に膨らむようにカーブし、全体的に「緩やかなS字状」を呈している。
人の頭部の重さは、全体重の約1割といわれている。体重が70キロの人であれば、7キロの重量を、タテになった背骨で一日中支え続けなければならない。
これを「直線」の背骨で支えていたら、たとえ椎間板がクッションになったところで背骨は破損してしまう。背骨がS字状になっているのは、頭など体の上部の重量を放散させ、脊柱の負担を軽くするためなのだ。
椎骨同士は複雑に連なっている、と書いたが、椎骨の形状もまた複雑だ。断面図を見ると、椎骨の中央には大きな穴が開いており、椎骨が連続することでこの空間はトンネルのような空洞を形成している。ドーナツをいくつも積み上げたようなイメージだ。
このトンネルを「脊柱管」と呼び、中を神経の束が走っている。そして、この束から派生する神経は、脊椎と脊椎の隙間から細い神経を枝分かれさせているのだ。
わずかな異常が大きな痛みに
人の体というものはよくできていて、複雑な構造の連続する脊柱管を通る脊髄や「馬尾(ばび)」などの神経の束も、わずかに空いた脊椎の隙間を通る神経も、脊椎そのものに損傷がない限り、どんな動きをしても影響を受けない、つまり痛みを発することはないのだ。脊椎と神経はさまざまなパーツがそれぞれ「正常を保つ」ことにより、上半身の可動域を維持し、脊髄や神経の安全も保っている。