廃棄予定だった「牛の尿」を資源として再利用、地球の課題を解決?
Upcycling Cattle Urine

豊かな水源や森林に恵まれた北見市では乳用牛や肉用牛の飼育が盛ん COURTESY OF KANKYO DAIZEN
<「地域の厄介もの」だった牛の尿が、今や環境保全に役立つ存在に。北海道北見市の企業が牛の尿から消臭剤を製造。災害支援物資として被災地にも届けられている>
全国の約6割を占める乳用牛を飼育する酪農王国・北海道。都府県の需給を支える役割を担う一方、そのふん尿は強い悪臭を放ち、生態系にも影響を及ぼす厄介な存在だ。
こうした困り事を解決するとともに、ただの排泄物にすぎなかった「牛の尿」に新たな活路を見いだしたのが、酪農が盛んな北海道北見市にある小さな会社、環境大善である。
環境大善は、牛の尿由来の消臭液「きえ~る」などを製造・販売する会社だ。消臭効果試験により、同商品はアンモニア臭や腐敗臭といった悪臭成分を減少させることが明らかになっている。
自然界に存在する微生物には有機化合物を分解し、人間に有益な別の物質に変える働きをするものが存在する。同社はこの働きを利用した発酵技術で牛の尿を無害化し、抗菌効果を持つ液体を製造。悪臭を発生させる微生物(悪玉菌)の増殖を抑え、臭いの発生を止めると考えられている。
動物のふん尿や木材、生ごみなど、今まで活用されていなかった動植物由来の有機性資源は「未利用バイオマス」と呼ばれ、再生可能な資源として注目を集めている。