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廃棄予定だった「牛の尿」を資源として再利用、地球の課題を解決?

Upcycling Cattle Urine

2025年4月1日(火)10時45分
酒井理恵(ライター)

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工場内にある処理プラント。ここで2次工程を行っている COURTESY OF KANKYO DAIZEN

同社が「牛の尿」に着目したきっかけは、今から27年前、創業者・窪之内覚の元に持ち込まれた「不思議な液体」だった。当時、彼は北見市のホームセンターで店長を務めており、いとこの酪農家から「牛の尿を微生物で分解した液体を商品にできないか」と相談される。

背景には、処理し切れない牛のふん尿が土壌や川を汚染する公害問題があった。自治体と酪農家が協力し、ふん尿処理が進められていたが、酪農家も処理設備に多額の費用を負担しており、経営を圧迫しかねない状況だった。

元は牛の尿であるのに、驚くことにその液体は無臭だった。しかも試したところ、ペットのふん尿や生ゴミ、トイレの悪臭まで見事に臭いが消えたという。当時は今ほど消臭剤が豊富ではなく、商品化の話はとんとん拍子に進んでいった。


とはいえ簡単に売れる商品ではなく、「『面白商品』の枠をなかなか飛び越えられなかった」と現社長の窪之内誠は振り返る。2016年に代表取締役専務に就任した窪之内は、リブランディングと研究開発に取り組んだ。

バイオマスとして有用

北見工業大学との共同研究は17年から始まっていたが、20年には共同研究講座を開設。大学と同社の研究チーム計9人が8年にわたり、消臭液と土壌改善の効果検証に取り組んできた。

大学チームを主導する小西正朗教授の専門は生物化学工学で、「牛の尿はバイオマスとしての高い可能性がある」と評しているという。

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