カリフォルニアの「2045年ゼロカーボン電力」を阻む「これだけの課題」

California’s Green Dream

2025年1月23日(木)18時00分
ジェームズ・ビッカートン(本誌記者)

山火事は電線が原因となる場合もある。22年3月に科学専門誌サイエンス・アドバンシズに発表された報告によれば、2000年代の山火事は「それ以前の20年間と比べて規模は最大4倍、頻度は3倍に増えている」という。

カリフォルニア州では電力網の老朽化と自然災害の「深刻化」が電力供給への二重の圧力となって、二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みを複雑にしていると、ファニボンは本誌に語った。


州議会に提出された報告書によれば、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)は電力大手3社に対し、山火事予防と保険料のコストとして19~23年に270億ドルを料金に上乗せすることを許可。コスト上昇率は27年までインフレ上昇率を上回る見込みだ。

貯蔵容量の拡大が急務

一方、貯蔵容量が発電量に追い付かないという問題もある。昨年11月のロサンゼルス・タイムズ紙の調査によれば、同州の過去1年間の発電量は太陽光発電だけで300万メガワット時。51万8000世帯の1年分の電力を賄える量で、17年の8倍に増えている。

電力網の過負荷を防ぐために余剰分を近隣の州に送電し、カネを払って受け入れてもらうことさえあった。そうしたコストは「カリフォルニアで電力料金を払う人々が負担している」と、独立系の発電会社でつくる「西部電力取引フォーラム」の元幹部のゲリー・アッカーマンは言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感する動きが先

ビジネス

様々な可能性を検討、方向性決まった事実ない=ホンダ

ワールド

米農務長官候補、輸入関税で国内農家損失なら直接支援

ビジネス

全国コアCPI、12月は+3.0% 電気・ガス・食
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    【トランプ2.0】「少数の金持ちによる少数の金持ちの…
  • 10
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中