最新記事
SDGsパートナー

「ハンガーを1本たりともごみにしない」...日本コパックが30年かけて築いた循環型システム

2025年1月8日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
日本コパックの物流用ハンガー

日本コパックの物流用ハンガー

<アパレル業界の物流用ハンガーを製造販売する日本コパック株式会社は、30年以上前からリユース・リサイクル事業に取り組むSDGsの先駆者だ。業界を巻き込んで構築した循環型システムの原点は、当時の社長が「夢の島」で見た衝撃的な光景だった>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

リサイクル事業への挑戦を決意させた一言

アパレルメーカーは、商品を工場から店舗に輸送する際にしわがつかないようハンガーに掛けて出荷している。その際に使用される「流通ハンガー」を長年にわたり生産している日本コパック株式会社は、アパレル業界を陰で支えてきた老舗だ。

日本コパックは90年代初頭に、業界ではいち早く使用済みハンガーのリユースとリサイクルを始めた。きっかけは、当時の社長だった斉藤建三氏が、東京都のごみ埋立地「夢の島」を訪れたことだ。そこで目にしたのは、大量の自社製ハンガーだった。

ハンガーは曲線部分があるため、つぶしても再び膨れてしまうなど、廃棄物のなかでも扱いにくいものとされてきた。「ハンガーくらい厄介なごみはない」という処理場の担当者の言葉に衝撃を受けた斉藤社長は、リサイクル事業の必要性を痛感。そして、「ハンガーを1本たりともごみにしない」という強い決意を胸に、挑戦に乗り出した。

当時、アパレル業界でリサイクルに取り組む企業はほとんどなかったが、日本コパックは1992年に使用済みハンガーの回収、リユース、リサイクルを本格化。百貨店や量販店など多くのアパレル企業に協力を呼びかけ、業界全体を巻き込む循環型システムをつくり上げていった。

しまむらと実現した「完全循環型システム」

日本コパック株式会社のハンガー

しまむらと完全循環型リサイクルシステムを構築している、日本コパック株式会社のハンガー

その中でも特に先進的なのが、2007年から大手アパレル企業のしまむらと協働で展開している、完全循環型リサイクルシステムだ。しまむらグループで使用されたハンガーやビニール袋を再資源化し、再びハンガーやビニール袋にしてしまむらで使用するという独自のサーキュラーエコノミーを構築した。

具体的には回収したハンガーなどをまずは日本コパックの国内関連工場で再資源化し、その材料を活用して中国やASEANの同社工場でハンガーやビニール袋を製造、再びしまむらで使用するという仕組みだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、夏までに中立金利に到達の見通し=仏中銀総裁

ワールド

次期政権の政策に不透明感、サイバー攻撃は米中関係利

ビジネス

FOMC参加者、インフレリスクの高まり指摘 次期政

ワールド

米国務長官、トランプ氏のグリーンランド購入案に否定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 7
    マクドナルド「多様性目標」を縮小へ...最高裁判決の…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 10
    日本の「人口減少」に海外注目...米誌が指摘した「深…
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 7
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 8
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 9
    「日本製鉄のUSスチール買収は脱炭素に逆行」買収阻…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中