100年で1.8mの表土が消失...フロリダの大地を救うのは「米作り」? 鳥たちも集まって一石三鳥
Rice Aiding the Everglades
水田での米作りは土壌や周辺環境の保全につながっている JEHANGIR H. BHADHA
<米エバーグレーズ農業地域では毎年夏の米作が土壌の健康維持に一役。二毛作のサトウキビの収量も上がり、いいことづくめだ>
米フロリダ州南部、オキーチョビー湖(Lake Okeechobee)の南の約28万ヘクタールの広大な土地に広がるエバーグレーズ農業地域(Everglades Agricultural Area)では、毎年夏に米作りが行われる。作付面積は9300ヘクタール、1ヘクタール当たりの収量は4.5トンに上る。
土壌は有機質と栄養に富み、窒素やリン、カリウムの施肥を必要としないが、その一方で丁寧な管理は欠かせない。この地では過去100年ほどの間に、約1.8メートルもの厚さの表土が失われているのだ。
表土が失われるスピードを遅らせ、栄養豊富な土壌を維持する方法の1つが、雨の多い夏に水を張った田で米を作ることだ。周辺の運河から水を引き込んで稲を育て、地面が乾いてきたら収穫の時期だ。
エバーグレーズ農業地域では1950年代にも稲作が行われていたが、作付面積は800ヘクタール程度にすぎなかった上、稲を枯らす白葉病(しらはびょう)という病気が発生。米作りは一時、途絶えたが、77年にサトウキビとの二毛作が始まった。
この15年で作付面積も栽培品種も大きく増加。2008年には作付面積は4800ヘクタールで品種は主に2種類だったが、今では作付面積は倍になり品種も10種類を超えている。
稲が植えられるのは、刈り入れ後のサトウキビ畑だ。エバーグレーズ農業地域では晩春から夏にかけて、2万ヘクタール以上のサトウキビ畑が休閑期を迎える。
昨年は、その約半分で米作りが行われた。畑の残り半分は、次のサトウキビ栽培のシーズンまで放置されるか、稲を植えないままで水が張られる。これは休閑地湛水(たんすい)と呼ばれる。
鳥にも生活の場を提供
周辺の18万ヘクタール近い土地は、フロリダ州南部特有の土壌「ヒストソル(Histosols)」で覆われている。ヒストソルは有機質に富んだ湿った土で、最大で80%の有機物を含んでおり、農業を支える重要な資源だ。
ヒストソルは数千年の年月をかけて形成された。水に覆われた湿原では、植物などに由来する有機物が、分解されるよりも先に堆積していく。
だが1900年代初めに農業生産のために土壌の水抜きが行われるようになると、有機物は堆積するよりも先に分解されるようになってしまった。これは主に、微生物がゆっくりと有機物を分解し、自らの栄養とした際に起こる酸化による。その結果、土壌は徐々に減少し、厚みを失っていった。
この地域での土の厚みは場所によって異なるが、数センチから150センチ程度。表土が薄くなって下にある石灰石の岩盤がむき出しになったり、石灰石の破片が土壌に交ざったりしている場所も多い。
米作りは土壌の健康維持に一役買っている。一定期間、田に水を張ることで、害虫の卵の孵化だけでなく微生物の活動も抑えられる。また、土壌そのものの保水能力が向上し、雨の少ない季節になっても土壌がより多くの水分を保持できるようになるのだ。
こうして土壌の健康が改善されると、サトウキビの収量も上がる。表土が減っていくスピードも遅くなる。
水田で稲を育てると、オオシラサギやユキコサギ、ブロンズトキといった湿地で暮らす鳥たちが集まってくることも分かっている。
Jehangir Bhadha, Associate Professor of Soil, Water and Nutrient Management, University of Florida
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