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浄水グッズで「からだに安全な水」を世界中に...KGホールディングスが「水の格差」問題に挑む理由

2024年12月4日(水)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

さらに同社は、各家庭でも容易に水の浄化ができる方法はないだろうかと踏み込んだ。そして開発されたのが、ペットボトルを使って簡単に浄水できるキット「アクアリピュア」だ。

浄水キット「アクアリピュア」

浄水キット「アクアリピュア」。震災・水害が起きた際の飲料水や生活用水の確保のほか、アウトドアのレジャーなどでも活用できる

川の水や雨水も簡単な手順で浄水にできるこの簡易キットは、被災時の飲料水や生活用水の確保にも活用できると期待が高まっている。2022年のフンガ・トンガ噴火や2023年のトルコ・シリア地震の被災地に寄贈されたほか、日本国内でも南海トラフ地震への備えとして普及が進んでいる。

途上国の子どもたちへの教育機会の提供や、経済発展に繋げる

浄水に関する製品開発が始まったのは、杉本氏が河川浄水事業の視察で訪れたフィリピンの環境を目の当たりにしたことがきっかけだった。

「(当時の)自分の娘と同年齢程度に見える小学生くらいの女の子が、ひどい異臭のする川から水を汲んでいる姿を目にして、衝撃を受けました。その地域ではこの水を飲料水や生活用水として使っているそうなのです。中には、家族のために毎朝往復2時間以上かけて水汲みをしている子どももいるとのことでした」

安全な飲料水を日常的に確保できず、そのために健康や生活や経済面で負担を追う人々がいる――そんな「水の格差」の解消を目指した同社が出した答えが、浄水技術の開発・普及だった。

浄水の確保が難しい途上国の地域に同社の浄水施設を導入したところ、子どもたちが日々の水汲みから解放され、学校に行けるようになったとの報告を受けたという。

「子どもの教育の機会が増えれば、大人になったときに自分たちが学んだことを社会に還元できるようになるでしょう。私たちの水浄化事業が、将来的にその国の経済発展に繋がっていくことを願っています」と、杉本氏は語る。

現在、エチオピアでは政府機関の水エネルギー省と協力しながら2機目の浄水装置の設置準備を進行している。

1機目は日本政府の支援で設置したが、2機目については日本政府とともに浄水事業を支援する現地企業も見つかり、地域全体をカバーする浄水装置の設置に加え、個人向けに浄水キット「アクアリピュア」を提供できる見込みだという。

さらに2機目の装置では、倉庫として使うコンテナの屋根にソーラーパネルを設置。太陽光発電でポンプやシャワーを稼働させる設計となっており、環境に優しいシステムになる予定だ。

「安全な水を供給されても、正しく使う知識や習慣が定着しないと病気のリスクはなくなりません。そのため、今後は手洗いや衛生的な水の使い方についての教育や啓蒙活動も展開していく必要があると考えています」と、杉本氏は語る。

世界各地で異常気象による災害が発生、戦争や紛争も起こるなか、水資源をめぐる対立も激化している。「きれいな水」を届けるKGホールディングスの取り組みは、「水の格差」の是正に加え、貧困や教育格差など多くの課題を解決するための第一歩となるだろう。

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