浄水グッズで「からだに安全な水」を世界中に...KGホールディングスが「水の格差」問題に挑む理由
エチオピアの若者たちに浄水キット「アクアリピュア」の使い方を教えるKGホールディングス代表取締役の杉本博樹氏
<日本では、蛇口をひねればきれいな水をいつでも飲むことができるが、世界には戦争や災害で清潔な水が利用できなかったり、飲み水が不足していたりする地域は少なくない。こうした課題に対し、KGホールディングスは「簡単に浄水できる」製品を開発し、世界各地での設置に取り組んでいる>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
世界中できれいな飲料水が得られる浄水システムを開発
KGホールディングス株式会社は、社会インフラ整備を主たる事業とする橋梁技建株式会社の持ち株会社として、2018年に設立された企業だ。
橋梁技建が事業を通して見出した環境問題や災害時の支援、地域社会への貢献における課題に対し、新商品や新サービスの開発・提供によって貢献すべく立ち上げられた。
そして現在、KGホールディングスが力を入れているのが浄水剤の開発・提供だ。
同社の浄水剤「ポリグル」は、納豆菌が生み出すネバネバ成分であるポリグルタミン酸を利用し、水の汚れを凝集・沈殿させてから「ろ過」するという仕組み。
日本の水道局で使われている浄水技術を応用し、コンパクトにしたもので、大規模な浄水設備がなくても川や雨の水を安全な飲料水として利用することが可能となる。
「すでに当社の簡易浄水設備と導入剤は、バングラデシュやソマリア、タンザニア、エチオピアなど20か国以上の国で導入されています。そのまま飲むと下痢を起こしてしまうような汚れた河川を生活の基盤としているような地域でも、安全な飲料水を日常的に確保できるようになりました」と、代表取締役の杉本博樹氏は話す。
浄水剤を使用する簡易浄水設備は、大規模な設備に比べて低コストで導入できる。そのため、貧困地域でも導入が進み、現地では浄水に関わる仕事が生まれるなど経済的な支援にも繋がっている。
また、安全な水を提供し続けるためには浄水施設の適切な管理も必要だ。KGホールディングスでは橋梁技建の技術者との協力で子どもでも簡単に操作・メンテナンスを行える設計を実現した。