日本の技術で世界の干ばつ解決へ...ナガセヴィータの研究者に聞く「糖」の意外な活用法
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東山さん自身、南米を訪れた際に持続可能な農業について考えさせられた経験があった。
「ブラジルを車で走っていると、数時間、大豆農場の風景が続くんです。広大な畑に散布される化学農薬・肥料は膨大な量で、コストやエネルギーも相当なもの。地球環境にとって『このままではいけない』と痛感し、自然に優しいやり方に変えていく必要性を強く感じました。
さまざまなポテンシャルがあるトレハロースをはじめ我々の素材を活用し、持続可能な農業に貢献していきたいと思っています」
東山さんがそう語るように、トレハロースはまだまだ多くの可能性を秘めている。植物の免疫力を高めるBS効果はまだ研究段階だが、バイオ農薬・肥料の弱点を補い、普及を加速させていくカギにもなり得るという。
「微生物を使うバイオ農薬・肥料は、生ものであるためその保存性や安定性に大きな課題があります。しかし、トレハロースを使えば、微生物の細胞を守り、安定化させられると分かっています。ほぼすべての有用微生物に対して使用できると考えられます」
トレハロースは植物に対し直接的にBS効果を発揮するだけなく、間接的にも活用することができるのだ。例を挙げると、南米では大豆栽培にバイオ肥料の根粒菌が使用されているが、根粒菌は長持ちせず、農家での保管時に課題がある。その品質保持期間を伸ばす安定化剤として、現地では実際にトレハロースが配合されている。
二つの「i」に込めた思い
同社は現在、根粒菌のみならずさまざまな微生物に対するトレハロースの効果を研究するとともに、世界の農薬・肥料メーカーにトレハロースの農業利用についてアピールしている。東山さんがこれからの展望を語る。
「トレハロースがサステナブルな農業に貢献できると自信を持って言えます。今は南米が中心ですが、アメリカやヨーロッパ、最近ではアフリカからも引き合いがあり、メーカーに紹介すると、ほぼ100%興味を示してもらえます。将来的に活用がさらに広がっていくようにアプローチしていきたいです」
農業課題の解決に取り組む同社は24年4月、国際的なサステナビリティ評価機関であるフランスのエコバディスから、評価対象企業のうちスコアが上位1%の企業に与えられる最高位のプラチナ評価を得た。
同社は農業分野のみならず、「人」「環境」「事業」を軸に策定したサステナビリティ行動計画を基に多彩なアクションを起こしている。
24年4月に「林原」から社名を変更し、新たなスタートを切ったナガセヴィータ(Nagase Viita)。新社名の「Viita」で並ぶ二つの「i」は、生命が寄り添う姿を表し、「人と自然が共生するサステナブルな未来を共創したい」との思いを込めたという。
トレハロースが農業と自然環境の架け橋となるのか、今後も注目だ。
●問い合わせ先
ナガセヴィータ株式会社
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