最新記事
SDGsパートナー

サトウキビの搾りかす「バガス」でプラスチック依存から脱却する...折兼が挑む「フードサイクリング(食の循環)」とは何か?

2024年11月21日(木)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
折兼のバガス容器「バガスシリーズ」

折兼のバガス容器「バガスシリーズ」

<プラスチックごみによる環境汚染が深刻化する中、サトウキビの搾りかす「バガス」を用いた容器開発と、その堆肥化による「フードサイクリング」で環境問題に挑む>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

2050年には海洋プラスチックが魚の総量を超えると世界経済フォーラムが試算するなど、プラスチックごみによる環境汚染が深刻化している。1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量が世界で2番目に多い日本は、その問題の当事者だ。

プラスチックは自然環境ではほとんど分解されないため、それを口にした水鳥や魚を死に至らしめる可能性があるだけでなく、食物連鎖によって人間も摂取することになる。

こうした問題に対して、プラスチック脱却を目指して、サステナブルなパッケージを開発すべくメーカー部門を立ち上げ、販売しているのが食品包装専門商社の折兼だ。

サトウキビの搾りかすで製造...次世代の容器

明治20年創業の折兼は、長年にわたりスーパーマーケットや飲食店向けに食品包装容器や衛生資材を販売する、食品パッケージ業界をけん引してきた老舗企業だ。

同社がプラスチックに代わる素材として開発したのが、「バガス」を使用した容器である。バガスはサトウキビの茎や葉などの搾りかすから作られており、耐水・耐油性に優れていながらも、廃棄後は自然に分解されることから、近年、注目を集めている自然素材だ。

しかし、プラスチック製品を得意としてきた企業がなぜ、新たな素材の製品に取り組むことになったのか。きっかけは、同社代表である伊藤崇雄氏が船釣りに出かけた際に、最初に釣れたものがレジ袋だったことにショックを受けた経験だったという。

多くのプラスチック製品を販売してきた自社こそ、環境問題に取り組む責務がある...。取引先に対して、プラスチックの代替品への切り替えを提案することが環境問題への回答であるとして、新容器開発をスタートした。

しかし、業界の前例が少ない中、環境に配慮した容器を提供することには数多くの課題が立ちはだかった。まず、サプライチェーンが整備されているプラスチックと比べるとコスト高になってしまうこと。そして何よりも環境に配慮したパッケージ製品への理解を取引先などから得ることが大きな壁になっていたのだ。

そこで製品の原料となるバガスを多く排出している中国を生産拠点に決定することで、製造コストを抑制。バガスの原料も工場近くから入手し、輸送にかかるCO2排出量の削減にも努めただけでなく、日本基準の製造や検品の体制を組むことによって品質も担保した。

その結果、使い捨て容器としては世界で初めてHACCP Internationalの認証を取得するなど、「バガスシリーズ」は高い安全性と品質を証明するまでに至る。環境と品質に配慮しながら製品化した同シリーズは毎年販売数を着実に伸ばし、同社の主力商品の1つにまで成長を遂げている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポーランドの新米基地、核の危険性高める=ロシア外務

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想

ワールド

印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 被害状
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中