書籍の「切れ端」で資源循環の大切さを伝えたい...大日本印刷(DNP)が手がけるアップサイクルアートとは?
アーティストが一つひとつ手描きで彩色する「ほんの切れ端」
<大量廃棄や自然環境の劣化などが地球規模の問題となるなか、大日本印刷とDNPコミュニケーションデザインは、アップサイクルの取り組みをスタート。書籍の切れ端を使った製品で、資源循環への貢献を目指す>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
資源の有効活用とアーティスト支援を両立させた「ほんの切れ端」
大量生産・大量消費の時代から、持続可能なものづくりの時代へ──。産業革命以降続いてきた社会経済システムの変革を目指して、国連は2015年9月に「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」を採択。世界の国々は、大量生産・大量消費社会によってもたらされた大量廃棄や自然環境の劣化、資源枯渇、気候変動など多くの社会問題の解決に取り組み始めた。
SDGs目標12に掲げられた「つくる責任 つかう責任〜持続可能な生産消費形態の確保」を達成するための手法として、多くの業界から注目されているのが「アップサイクル」だ。
アップサイクルとは、本来は捨てられるはずのものにアイデアやデザインを加え、アップグレードした製品に生まれ変わらせる手法のこと。例えば、経年変化した衣類をトートバッグに作り替えたり、商品製造の際に廃棄される野菜や果物の皮でお菓子を作ったりするのも、アップサイクルにあたる。日本でもさまざまな企業がアップサイクル製品を手がけており、徐々に認知度も注目度も高まりつつある。
そんななか、大日本印刷株式会社(以下、DNP)と株式会社DNPコミュニケーションデザイン(以下、DCD)、アート作品のプロデュースを行うリフレクトアート株式会社がコラボして生まれたのが「ほんの切れ端」だ。それは、書籍を作る際に切り落とされる端材を一点もののアート作品に仕上げたアップサイクルアート。資源を有効活用しつつ、収益金で若手アーティスト支援も両立させている点に大きな特徴がある。
「書籍の端材をアートに」と聞いてもイメージしにくいかもしれないが、書籍を作る際はページを重ね、背表紙にあたる部分をのりで固定した後に、仕上がりサイズにあわせて背表紙以外の3辺をカットする。その工程で発生する切れ端に、アーティストが手書きで彩色したのが、「ほんの切れ端」というわけだ。DCD匠デザイン室の四方豊氏は、この製品を作るに至った経緯をこう話す。
「DNP久喜工場で、書籍の製造工程を見学したのが活動を始めるきっかけでした。裁断された切れ端を手にしたところ手触り感がとてもよく、これをアップサイクル製品にできないかと考えました。端材に新しい価値を与えられるのではないか、多くの人にものづくりの過程に触れる楽しさを提供できるのではないかと思ったのです」
その後、匠デザイン室では、切れ端を使ったアップサイクルの可能性を模索。リフレクトアートが扱うアップサイクルアートに出会ったことで、切れ端を一点もののアートに変えるアイデアがひらめいた。結果、DNPとDCD、リフレクトアートの協働という形で「ほんの切れ端」の企画製作が始まったのである。