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肥料に燃料、接着剤にも...再資源化で産廃処分ゼロを実現した中日本カプセルの「ゼライクル」とは?

2024年8月8日(木)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

ソフトカプセルの製造風景

ソフトカプセルの製造風景

このソフトカプセルをつくる際に生じる「ゼラチンの残渣」が問題だったと、開発部の須原渉氏は振り返る。

「当社は年間10億粒以上のソフトカプセルを製造していますが、製造量が増加するにつれてゼラチン残渣の量も増え、年間300トン以上にもなっていました。それを産業廃棄物として焼却処分した際に、一酸化二窒素という強力な温室効果ガスを発生させてしまうことも分かったのです。これは経営理念の一つである『健康社会への貢献』にそぐわないとして、代表取締役社長の山中利恭たっての希望で、ゼラチンをリサイクルする『ゼライクル』のプロジェクトが始まりました」

300トン以上の産業廃棄物をゼロに──その使い道は?

再資源化にあたり、同社はあらためてゼラチンの特性に着目した。豚皮由来の主成分は、コラーゲンなどと同じ「アミノ酸」であり、窒素を豊富に含む。それならば、肥料として利用できないだろうか? 人間だけでなく、作物も健康にできるのではないか? ゼラチン由来の肥料は国内肥料資源となり、原料の多くを海外に依存している化成肥料の価格高騰対策にもつながる。

同社は岐阜大学や岐阜県農業技術センターと連携し、新たな肥料の製造・販売の開拓に乗り出した。そして現在、3種類の「ゼライクル肥料」を国内20社の肥料メーカーや農家に出荷し、利用実績を積み上げている。

「地元の大垣養老高校と一緒に、ゼライクル肥料を使用した稲作の実証実験を行っています。昨年はくず米の減少や虫害の予防が確認できました。高校生達がつくったお米は社員にも配布しています」と、須原氏は語る。

この取り組みは、持続可能な食料の供給体制を構築するために農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」の基盤確立事業としても認定されている。

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大垣養老高校との稲作の実証実験で、「ゼライクル液」を水田に施肥する様子

有機質肥料としての再資源化に加えて、接着剤やバイオマス発電の燃料といった利用方法も確立し、2024年6月には産業廃棄物として処分するゼラチン残渣が「ゼロ」になった。

地球規模でゴミ問題が深刻化し、食糧危機も叫ばれる中、産業廃棄物を再資源化する中日本カプセルの「ゼライクル」プロジェクトは、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に寄与した取り組みであると同時に、持続可能な食料生産にも貢献していると言える。環境に配慮しながら事業成長を追求できることから、国内外の製造業者のロールモデルになり得るだろう。

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