CO2除去ビジネスの成功に懸ける米テック大手の目利きは確かか?
Why Big Tech Is Pumping Big Money Into Companies Pulling CO2 From the Air
先月稼働したクラウドワークス社の「マンモス」。大気中から直接CO2を除去する世界最大のプラントだ COURTESY OF CLIMEWORKS
<CO2を膨大に排出し、気候変動対策の目標達成を迫られているアメリカのテック大手がこぞって大型投資を発表。空気中からCO2を取り出す技術への注目が高まっている>
マイクロソフトやセールスフォースなどテック大手は6月18日、気候変動対策として、大気中から二酸化炭素(CO2)を直接除去するさまざまな試みに、追加で資金を注ぎ込むことを発表した。
その目的は、CO2除去(CDR)という、小さいながらも成長中の分野を後押しすることだ。今回の数百万ドル規模の投資は、膨大な量のエネルギーを消費するテック大手が、壮大な気候変動対策の目標を達成するための最新の動きといえる。
「CO2除去は保険として必要だ」と、セールスフォースでCO2除去事業を指揮するジャミラ・ヤマニは本誌に語った。同社は6月18日、CO2除去技術が必要なときに準備できるようにするために、CDR投資会社フロンティアに2500万ドルを提供することを発表した。
「後で利用できるようにするためには、今、早期投資する必要がある」と、ヤマニは言う。
18日には他にも、テック企業を代表してフロンティアが約4900万ドルのCDRを購入したことや、マイクロソフトが森林再生のために数百万ドルのCO2除去クレジット購入を約束したことなどが発表された。同社によれば、この取引は今のところ世界最大規模になるという。
これらの資金は、ラテンアメリカの植林プロジェクトやスウェーデンのバイオマスエネルギー施設のCO2追加回収の支援にあてられることになっており、テック企業が後押しするCDRアプローチの幅広さを示している。しかも、すべてが同じ日に発表された。
脱炭素化への圧力
テック企業が投資してきたCO2除去技術は、かつてはSF小説中の装置のように見えたが、それが今では実用化されるまでになった。
スイスのクライムワークス社はテック企業による数百万ドルの投資を使って、15年前に実験室で開発したCO2除去技術を、空気から直接CO2を分離・回収する世界最大の施設へと発展させた。
アイスランドにあるクライムワークスのマンモス・プラントは、同社にとって2番目の商業規模施設だ。現地の豊富な地熱エネルギーを利用して、CO2を排出することなく、大規模なCO2の「掃除機」に電力を供給している。同社は、マンモス・プラントで毎年3万6000トンのCO2を大気中から回収し、地下に隔離する予定だ。
クライムワークスのクライアント・ソリューション担当副社長、エイドリアン・シーグリストは、テック大手が同社をはじめとするCDR業界に初期の段階から最も多くの支援を提供してきた主な理由を3点挙げた。
「第1に、テック企業自身が脱炭素化を迫られている」と、シーグリストは言う。「そのプレッシャーはAI革命によってさらに高まっている」
大規模なAIモデルの学習と運用には、より大きなコンピューティング・パワーが必要になる。データセンターはますます巨大化して電力を消費し、それを冷却するためにさらに多くの電力が必要になる。