CO2除去ビジネスの成功に懸ける米テック大手の目利きは確かか?
Why Big Tech Is Pumping Big Money Into Companies Pulling CO2 From the Air
米国電力研究所(EPRI)の最近の予測によると、2020年代の終わりまでに、データセンターの電力消費量はアメリカで生産される全電力の最大9%、現在の2倍になる可能性があるという。
テック大手の大規模な投資の理由としては第2に、テック企業の文化がCDRの先駆的な性質とよくマッチしていることが挙げられる、とシーグリストは言う。
「テック企業はイノベーションに慣れている。だから、彼らが同じ感覚で気候変動分野に目を向けるのは、ある意味自然なことだ」
3番目は? そう、金だ。テック企業は、CDRの会社が規模を拡大しようとしているときに、それを実現するためのリソースを持っている。
気候科学者は、CO2排出量を迅速に削減し、クリーンエネルギーを増やすだけではなく、世界規模で、既に大気中に過剰に排出されたCO2を削減する方法を見つけなければならないと言う。
気候変動に取り組む独立系調査会社のローディアム・グループのパートナー、ジョン・ラーセンは本誌の取材に対し、「CO2除去は、気候変動を解決する戦略として、非常に重要な要素だ」と語った。
ローディアムは、今年初めにCDR手法の現状に関する本格的な報告書を作成した。その結論は、「CDRは成長する必要がある」ということだ。
「今世紀半ばまでに、アメリカだけで約10億トンのCO2を除去する必要がある」と、ラーセンは言う。ローディアムの調査では、このままではアメリカが2035年までに除去できるCO2は、約5000万トンにすぎないという。「まだまだ先は長い」
ローディアムの報告書には、植林や農業といった自然の力を使ったソリューションから、クライムワークスのマンモス・プラントの未来的な技術まで、さまざまなCDRの手法が取り上げられている。
「方法はいろいろだ」とラーセンは言う。そして費用も、長所短所も、環境への影響もソリューションによってそれぞれ異なっている。
「自然の力を使ったソリューションは誰にでも使えて、商業的にすぐに実用化可能な傾向がある」とラーセンは言う。だが一方で、数値的に評価しづらい部分もありそうだ。
18日の発表にも、自然の力を使ったCDRが盛り込まれていた。
マイクロソフトがBTGパクチュアル・ティンバーランド・インベストメント・グループと結んだ契約では、マイクロソフトが2046年までに自然の力を使った最大で800万トン分の炭素クレジットを売却するという。このクレジットは、ティンバーランド・インベストメント・グループが10億ドルを投じたラテンアメリカでの植林活動で創出された。
マイクロソフトのエネルギー市場上級ディレクターを務めるブライアン・マーズは、本誌の取材に対し、自然の力を使ったソリューションはマイクロソフトの環境目標の達成に向けた重要な要素であり、同社のCDRクレジット購入のほぼ半分を占めることになるだろうと語った。
「自然の力を使ったソリューションなくして、低炭素経済へのスムーズな移行は実現できないだろう」と彼は言う。
アルファベットやメタも出資
植林プロジェクトから送出されたカーボンクレジットの市場は、多くの企業にとってビジネスがしにくい市場だった。植林や森林保全を行うプロジェクトの中には、気候変動対策の目標に届かないと確認されたものも少なくなかった。
だが、「この分野のCDRに対するわれわれの自信は、市場が成熟するにつれて大きくなっている」とマーズは述べた。
環境NGOのコンサベーション・インターナショナル(CI)は、植林や森林の復興が、生物多様性の保護といった他の目標と齟齬を来さないよう、環境への影響に関する助言を行う予定だ。
マイクロソフトとBTGパクチュアルはいずれも、本誌の「最も信頼できる企業ランキング」にランクインしている。
ブラジルに本拠を置くBTGパクチュアルは、本誌の「世界で最も信頼できる企業ランキング」の金融サービス分野で44位だ。またマイクロソフトは「アメリカで最も信頼できる企業ランキング」のソフトウエア・通信分野で5位に入っている。
フロンティアによるCDR購入にも、自然の力を使ったものと新しい技術によるものの両方が含まれている。
フロンティアは2022年に、まだ黎明期のCDR産業のための需要創出を目的に、テック大手のアルファベットやメタ、ショッピファイ、ストライプなどから出資を受けて創業された。
フロンティアの戦略責任者ハナ・ベビントンは本誌に対し、同社はストックホルム・エクセルギー社との契約を結んだばかりだと語った。エクセルギーは廃材を燃やしてストックホルムの町に熱やエネルギーの供給を行っている企業で、この契約によりCO2の除去・貯留技術を自社の施設に導入することになる。