「エシカル印刷」へ 近藤印刷が切り拓く地域共創×循環経済の道
1954年に創業した名古屋市中川区の老舗印刷会社、近藤印刷。地元で培った信頼をもとに、時代の変化にあわせた事業転換を地域と連携して進める
<脱プラスチックの逆風に直面した名古屋の老舗印刷会社が大胆な事業転換を決断。歴史ある中川運河の地域を巻き込んで、文化・環境保全の新プロジェクトに挑む>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
株式会社近藤印刷は、近年の脱プラスチックの潮流を受けて、フィルム印刷を強みとした従来の事業から「エシカル印刷」へと方針転換し、環境に配慮した素材を用いたエシカルグッズの制作や、地域の循環経済のエコシステム構築を目指した事業に取り組んでいる。
「エシカル印刷」へと脱プラスチックの潮流の中で社運をかけて経営の舵を切った
昨今、プラスチックが引き起こす海洋汚染や大気汚染などの環境問題が深刻化しており、プラスチックの削減や資源の再利用推進の動きが世界的に加速している。印刷業界でも、ノベルティの印刷に使用するプラスチック削減や代替素材の導入など、脱プラスチック化が進んでいる。
こうした中で、愛知県名古屋市の老舗印刷会社である株式会社近藤印刷は、強みだったフィルム印刷から「エシカル印刷」に経営の軸を転換。風土づくり事業を新たに立ち上げ、地域における循環経済の構築を目指す取り組みを展開する。
「当社の主力事業はクリアファイル印刷でしたが、2020年から加速した脱プラスチックの流れでプラスチック製品が社会悪と見なされるようになり、注文が一気に激減。PRで配られるクリアファイルは最終的に捨てられることも多く、大量生産・大量消費の片棒を担ぐような仕事はしたくないと感じ、会社存続のために経営の方針転換を決断しました」と、代表取締役社長の近藤起久子氏は語る。
事業変革にあたって、同社は環境に配慮した素材を用いたグッズ制作ができる工房や、SDGs検定に合格した社員らを中心にしたエシカル推進室を開設。ものづくり体験や工場見学ができる環境を整え、再生PET素材や間伐材を用いたしおりやキーホルダー、捨てられる衣類の繊維をアップサイクルした紙を使用して制作したノートなど、エシカルグッズの開発に取り組んでいる。