最新記事
健康

「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」

2025年2月11日(火)08時50分
ニール・バルジライ (アルバート・アインシュタイン医科大学教授)

脂肪の秘密を解く

わたしたちの研究では、たしかにカロリー制限が直接病気を減らし、寿命を延ばしているように見えた。でもわたしには、このように劇的な結果をもたらしているのがカロリー制限そのものだという確信がなかった。

そこでまず、少食は老化そのものではなく肥満を防ぎ、肥満でなくなることで病気の発症を遅らせる防御機能が働いて、寿命が延びるのではないかと考えた。そして次のようなことを思いついた。


 

外で暮らすラットは餌を探すため毎日何マイルも走るので、多くのカロリーを消費する。そのラットをケージに入れる。そこでは好きなだけ食べられるので、当然外にいたときよりたくさん食べ、しかも走りまわることができない。

これはある意味、肥満とやせについての実験であり、体重維持のための食事とカロリー制限についての実験ではない。そろそろ脂肪を新しい観点から見る時がきたのだ。わたしたちはそのための研究を始めた。

(略)

脂肪細胞は余分な脂肪を蓄えているにすぎないと思われていたが、脂肪すなわち脂肪組織が生体としての作用を持ち、ホルモンやペプチドを分泌していることをわたしたちは発見した。

そのホルモンのひとつは「レプチン」と呼ばれ、満腹になったことを脳に伝えるものだ。何年もまえのことだが、レプチンは体重減少の治療薬になるだろうと多くの科学者が考えていた。

ところが、たしかに脂肪細胞が多いほどレプチンも多いものの、脳の受容体はある時点を超えると反応するのをやめ、このホルモンの効果がなくなってしまう。満腹を伝える信号を受けとるかわりに、信号がブロックされ、まだ十分食べていないように感じるからだ。

ラットなどによるレプチンの実験では、若い動物で生じた効果が、高齢の動物では生じなかった。カロリー制限は概ね老化を食いとめるが、高齢の動物はカロリー制限していてもレプチンに反応しない。

このように高齢になるとレプチン耐性ができるので、レプチンはカロリー制限の疑似効果を持つ老化治療薬として使うことができないとわかった。

(略)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州委員長、米関税に「相応の対抗措置」 12日に貿

ビジネス

米国の関税は容認できず、断固とした対応も=トルドー

ワールド

トランプ氏、就任後に中国主席と電話協議 「良好な個

ワールド

人質解放、停戦合意順守が唯一の道 脅しは無意味=ハ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から大炎上の納得理由
  • 3
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップルは激怒
  • 4
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 7
    36年ぶりの「絶頂シーン」...メグ・ライアンの「あえ…
  • 8
    世界のパートナーはアメリカから中国に?...USAID凍…
  • 9
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 8
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 9
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 10
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中