「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?
AN OUNCE OF PREVENTION
癌検診の普及を阻むもの
では、早期発見のための癌検診をめぐる状況はどうなっているのか。検診にお金を出しても個人レベルでの効果が見えにくいこともあり、人々が積極的に検診を受けたがらないのが現実だ。
BMCヘルスサービシズ・リサーチ誌に最近発表された研究によると、アメリカで癌検診により延びた寿命は過去25年間で総計1200万年に達するが、前述のようにアメリカ人の7割近くは定期の癌検診を期限までに受けていない。
「私たちの社会では、雇用と医療保険が結び付いている。そのような状況では、保険に加入しない人がどうしても出てきてしまう」と、ピスターズは警鐘を鳴らす。「保険に加入していないと、ある種の検診は受けないままになる場合がある」
ただし見落としてはならないのは、癌による死亡例の70%は、検診の方法が確立されていない癌によるものだという点だ。それに多くの癌検診には、不安、出血、痛みなど、ある程度のリスクが伴う。
しかもほとんどの場合、このような弊害は検診の恩恵を上回るとは限らない(アメリカ癌協会が癌検診を広く勧めていない理由はこの点にある)。
過剰な検診は、ただでさえ過剰な負担にあえいでいる医療システムに一層の負荷をかけかねない。
いま多くの医療機関が採算を取ることに苦労しているなかで、採算が取れている医療機関はたいてい、主として既に病気になっている患者を対象とする医療を行っていると、冒頭で紹介したラトナーは言う。