「臓器を摘出」する予防法も...がんは「治す」から「防ぐ」時代に、新たな医療アプローチ「VBC」とは?

AN OUNCE OF PREVENTION

2025年1月23日(木)17時44分
アレクシス・ケイサー(医療担当)

近年、多くの医療機関が予防重視の医療の有益性を認識し始めている。前出のVBCという新しい考え方でも、予防に重きが置かれる。

このアプローチが具体的にどのようなものかは、糖尿病を例に考えると分かりやすいと、MDアンダーソンのピスターズは言う。既存のモデルでは、医師は糖尿病患者に食生活の改善を指導し、薬を処方する。この診療行為に対して医師は報酬を受け取り、その後、患者がどのような経過をたどるかは報酬に関係しない。


それに対してVBCでは、四肢切断、心臓発作、失明など、糖尿病による合併症を抑えることにより、医療機関は報酬を得る。医療機関は、特定の患者集団の合併症を一定の範囲内に抑えることが期待され、その目標の達成度によって報酬が決まるのだ。VBCは「素晴らしい考え方」だと、ピスターズは言う。

ピスターズによれば、癌治療の一部の領域ではVBC的な発想をもっと強化する余地がある。確かに、テキサス州の住民の70%近くが過体重もしくは肥満の状態であることを考えると、人々の食生活と運動習慣を改善すれば、健康リスク全般を引き下げる効果が大きいかもしれない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ボーイング、第4四半期は大幅赤字見通し 市場予想

ビジネス

米コストコ株主総会、多様性プログラムの見直し要求案

ビジネス

見通し実現していけば「引き続き利上げ」、物価予想上

ワールド

北朝鮮、ロシアへの増派準備か 韓国軍が分析
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 7
    電気ショックの餌食に...作戦拒否のロシア兵をテーザ…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 10
    【トランプ2.0】「少数の金持ちによる少数の金持ちの…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中