最新記事
健康

やけ食いの代償...超加工食品がもたらす鬱病リスク

JUNK FOOD AND DEPRESSION

2024年8月16日(金)13時40分
ジェス・トムソン(本誌科学担当)

ストレス発散のために

こうした発見は、加工度が最小限の食品が実際に鬱病のリスクを低下させるという先行研究の結果を補完する。「野菜、果物、ナッツ類、シード類、豆類などが豊富な地中海式食生活は鬱病のリスクを下げることが分かっている」と、英アストンメディカルスクールのドゥエイン・メラー上級講師(エビデンスに基づく医療・栄養学)は言う。

イギリス在住の双子の姉妹エイミー・キングストンとナンシーは昨年、英キングス・カレッジ・ロンドンの実験に参加。2週間にわたって、カロリーは同じだがエイミーはUPFだけの食事を、ナンシーはUPFを一切含まない食事を続けた結果、エイミーのほうが空腹感・疲労感がはるかに強く、体重も増えた。


一部の専門家は、UPFと鬱病の相関関係は、鬱病患者が人工甘味料入り飲料などのUPFを好むせいではないかと示唆している。

「こうした飲料が鬱病のリスクを上昇させる可能性はあるが、逆に鬱病のせいで甘味料入りの飲料を好むようになる可能性のほうが高い。従って、これらの食品が気分の落ち込みや精神的不調のリスクを増すのか、それとも精神的不調が食品の選択に影響するのかは不明だ」とメラーは言う。

一方、チャンは次のように主張する。「私たちは対象者の食生活を鬱病発症の何年も前から追跡調査しているので、鬱病のせいで超加工食品を口にした結果、相関関係が示された可能性は低いと思う」

それでもUPFで一時的にストレス発散できるから食べるという人もいるだろう。

「実際、UPFはストレス発散のために摂取されがちで、一部はオルダス・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』に出てくるソーマと同じではないかと思う。つまり副作用ゼロで強い幸福感をもたらすドラッグだ」とホフマンは言う。

チャンらも論文で自分たちの研究の限界に言及している。「対象は白人女性が中心だった。本人の自己申告のみなので判別ミスの可能性もある」

それでも、加工度の低い食品を選択するのが賢いとは言えそうだ。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中