最新記事
健康

やけ食いの代償...超加工食品がもたらす鬱病リスク

JUNK FOOD AND DEPRESSION

2024年8月16日(金)13時40分
ジェス・トムソン(本誌科学担当)
ジャンクフードの類いでは空腹を満たせず逆効果になる可能性も NIXKI/ISTOCK (FEMALE), ILLUSTRATION BY VECTOR TRADITION/SHUTTERSTOCK

ジャンクフードの類いでは空腹を満たせず逆効果になる可能性も NIXKI/ISTOCK (FEMALE), ILLUSTRATION BY VECTOR TRADITION/SHUTTERSTOCK

<調理済みで加工度の高いジャンクフードは手軽だが、大量摂取すれば鬱病のリスクは1.5倍にという研究結果も>

ツイてない日はポテトチップスをやけ食い──。そんな人は気を付けたほうがいい。スナック菓子やファストフードなど加工度の高い「超加工食品(UPF)」はおいしくて手軽だが高カロリーで、研究によれば鬱病のリスクを上昇させる恐れもあるという。

米マサチューセッツ総合病院の医師でハーバード大学医学大学院教授のアンドリュー・チャンらはUPFが鬱病のリスクの上昇に関係していることを突き止め、2023年9月20日付で米国医師会のオンラインジャーナル、JAMAネットワーク・オープンに発表した。


「食生活が鬱病のリスクに大きく影響することは先行研究で裏付けられてきたが、具体的に食生活のどの要素が関係するかを示すデータはほとんどない。そこで私たちは、UPFが鬱病のリスクに影響するか否かを評価する包括的調査を実施した」と、チャンは本誌に語る。

研究では03~17年、調査開始時点で42~62歳の女性3万1712人を対象に4年ごとに食生活についてのアンケート調査を実施。医師による診断と抗鬱剤常用の両方が条件の狭義の鬱病と、どちらか一方を条件とする広義の鬱病の2通りについて、食生活の複数の要素と比較した。

その結果、UPF摂取量が最も多いグループは最も少ないグループの1.5倍、鬱病になりやすかった。特に人工甘味料や人工甘味料入りの飲料などは鬱病のリスクを上昇させることが分かったという。

「動物についてはこれまでの研究で甘味料と鬱病の関係が示唆されてきた。私たちの研究は人間の場合も同じである可能性をいち早く示唆するものだ」とチャンは言う。「人工甘味料は気分に影響する脳内の神経伝達経路を作動させるのかもしれない」

動物の研究では、プリン体が神経伝達物質として作用していた。プリン体は一部の食品に含まれる天然成分で痛風の原因として知られる。

「人工甘味料が鬱病にどう関係しているかについては、さまざまな可能性が考えられる」と英ハートフォードシャー大学の栄養生化学者リチャード・ホフマンは言う。

「神経伝達物質としてのプリン体の役割に関する情報はあまりない。だがUPFを大量に摂取する人は栄養不足になりがちだ。つまりUPFの多い食生活では特定の栄養が不足し、その結果、鬱病の発症リスクが上昇していた。例えばビタミンB12や葉酸やオメガ3脂肪酸(EPAやDHAなど)の不足は全て鬱病のリスク上昇に関連する」ホフマンによれば、もう1つの可能性は炎症だ。UPFの少ない健康的な食生活は抗炎症作用が強く、鬱病のリスク低下と関連付けられてきた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中