最新記事
健康ライフ

「高齢者は粗食にしたほうがよい」は大間違い、肉を食べないとがんのリスクが上がる理由

2024年5月8日(水)18時43分
和田 秀樹 (精神科医)*PRESIDENT Onlineからの転載

【米食より洋食で脚気が改善】

高木は帰国後、脚気はたんぱく質が少なく糖質が多いときに起こると主張し、これを確かめようとしました。

そこで海軍の脚気患者10名の半分を米食中心、もう半分は肉を含む洋食にしたところ、洋食群の脚気が改善しました。

さらに、遠洋航海に出る兵士でも、同様の試験を行ったところ、今までの食事をしていた戦艦では25名が亡くなったのに対し、洋食を食べさせた戦艦では1人も死亡者がいませんでした。

これらの結果から、1883年(明治16年)、高木は脚気の「栄養原因説」を提唱したのです。

これに反論したのが森です。森が留学したドイツでは、細菌学の研究が盛んで、脚気も伝染病の1つだと考えられていたため、森も脚気は感染症だと疑いませんでした。

そして、高木の説は、統計の取り方などに不備があるなどとして認めようとせず、陸軍では今までどおりの米食を続けさせました。

高木と森の論争は決着がつかなかったため、その直後の日清戦争(1894年、明治27年)や日露戦争(1904年、明治37年)において、陸軍では約29万人が脚気になり、約3万人が死亡しています。

文豪・森鴎外が、医者としては自らの説をガンコに貫いたが故の大失態として、よく知られているエピソードです。

一方、森の反論により高木説が主流派にならなかったため、せっかくのチャンスだったのに、日本人の体格は向上しませんでした。

だから当時の日本軍の兵士は小さかったのです。

シベリア出兵(1918年~1922年、大正7~11年)で、米英中国など各国の兵士と一緒に日本兵が映っている写真が歴史の教科書などにも載っていますが、もっとも背が低いのが日本兵です。

ネットで見ることができるので、興味のある人は検索してみてください。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中