牛乳=骨太は間違いだった! 「牛乳をたくさん飲む国ほど骨折が多い」衝撃の研究結果
1日3杯以上牛乳を飲むと、死亡率が2倍になるという研究も
【神話】
1日3杯以上の牛乳を飲むと死亡率が高くなる
前項で牛乳・乳製品の摂取量の多い欧米先進国は、牛乳・乳製品を少なく摂取するアジア諸国よりも高齢者に骨折者が多いことを述べた。それどころか、むしろ牛乳・乳製品が骨折や死亡率を高めている、という疑いさえ生じている。
【科学的検証】
ホントである。
牛乳を飲む高齢者に骨折が多発することから、今や牛乳が健康にプラスにならないことは、世界の多くの科学者の同意を得るにいたった。その上、2014年、1日3杯以上の牛乳を飲むと、骨折の予防にならないだけでなく、死亡率が2倍になることが、スウェーデンにあるウプサラ大学のカール・マイケルソン教授のグループによる研究で明らかになった(*5)。
こうして牛乳の健康へのマイナスの影響が強く疑われる事態となった。しかも、マイケルソン教授は、牛乳を大量に摂取すると、酸化ストレスが増し、骨折と死亡のリスクが高まるという仮説まで提出した。この仮説には根拠がある。
(*5)Michaëlsson K et al. Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies. BMJ 2014 Oct 28; 349: g6015. PMID: 25352269
老化を促進する成分が作用している可能性がある
牛乳に含まれる乳糖は、ブドウ糖とガラクトースからできている。このガラクトースが問題なのである。たとえば、マウスにガラクトースを連続して注入する、あるいは、エサとして大量に摂取させると、酸化ストレスが増し、炎症が起こり、結果として、老化が進む。これは事実である。何しろ、ガラクトースの注入は、老化を研究する際のモデル動物の作製法になってさえいるからである(*6)。
なぜ、ガラクトースが老化を引き起こすのか?
これまでの研究から、老化は細胞内でエネルギーをつくり出すミトコンドリアという器官が働かなくなること、あるいは酸化ストレスによって老化が促進することが明らかになっている。ここにガラクトースが関係していると推測される。すなわち、ガラクトースが細胞に酸化ストレスを与え、ミトコンドリアを不活性化し、慢性炎症、神経障害、免疫力の低下を引き起こす、と。
この仮説を検証するために、マイケルソン教授のグループは、次のふたつの集団を対象に、牛乳消費量と骨折や死亡率の関係を調査した。ひとつはスウェーデンの女性集団で、マンモグラフィーによる乳がん検査の受診者6万1433人(1987~90年当時、年齢39~74歳)。もうひとつは、スウェーデンの男性集団で、4万5339人(1997年当時、年齢45~79歳)。被験者は食事内容や生活についての96項目にわたる詳細な質問に答えた。
たとえば、食べ物については、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を含む飲み物の消費量。生活については、身長、体重のデータが集められ、教育レベル、結婚の状況も考慮に入れられた。そしてスウェーデン政府に登録されている個人の骨折と死亡についてのデータも活用された。結果は、こうなった。
(*6)Bo-Htay CB et al. Effects of D-galactose-induced ageing on the heart and its potential interventions. J Cell Mol Med. 2018 Mar; 22 (3): 1392-1410. PMID: 29363871