グルテンフリーで世界を視野に 日本の米粉開発の最前線
米を粉砕してつくる米粉への期待が高まっている。Photo: iStock/Arisara_Tongdonnoi
<世界的に小麦の供給が逼迫する中、期待を寄せられているのが日本の「米粉」。実は、小麦粉価格高騰の前から需要は増加傾向にあったという。人気の要因にはグルテンフリー志向の広がりもある>
欧米圏のグルテンフリー志向を追い風に
日本では長年、米粉・米粉製品の開発が進められており、小麦アレルギーやグルテンアレルギーの人の食に活用されてきた。近年みられる米粉の需要増の背景には、主に欧米圏での「グルテンフリー」志向の広がりも大きい。小麦粉でつくられるパンや麺類が、米粉によって近い形で再現され、新たな食の楽しみが生まれることへの期待は高まる一方だ。
米は縄文時代に栽培が始まり、弥生時代には日本の一部で主食になっていたと考えられており、現在に至るまで日本の重要な主食である。しかし農林水産省の食料需給表によれば、米の消費量は、1962年の一人年間消費量約118.3キログラムをピークに下がり続け、2020年には1962年時の半分以下、50.7キログラムであった。一方、小麦消費量は1950年代以降ほぼ安定している。自給率100%が見込める数少ない農作物である米の消費拡大を目指す意図もあり、米粉普及の努力が続けられてきた。
2017年頃までは米粉の需要・生産は横ばいだったが、日本米粉協会によって、欧米のグルテンフリー基準であるグルテン含有量20ppmよりも厳しい、グルテン含有量1ppm以下を基準とするノングルテン米粉認証制度・ノングルテン米粉加工品登録制度が導入されたこともあり、2018年頃から米粉の消費量・生産量ともに増加。過去5年で1.8倍に拡大している。
加えて、製粉技術が進歩して米粉の精製度が上がったことも消費拡大を促した。パンやケーキにも適した粉が作れるようになり、菓子・料理用、パン用、麺用と、用途別基準を定められるようになったことも大きい。
日本の短粒種米の米粉でフォーを
それまで米粉は和菓子やせんべいに使われるのが主な用途だったが、製粉技術向上に伴い米粉の加工品も進化してきた。2003年の創業以来、米粉を使った麺の製造に取り組んできたのが、東京都内に数店舗展開するベトナム料理店「チョップスティックス」だ。
「日本のおいしい米で、世界一おいしい米麺を」を目標に開発を開始。東南アジアで生産される長粒種米から手作業で作るフォー(ベトナムの米麺)を、日本の短粒種米の米粉でコストを抑えつつ工場生産するのには非常に多くの苦労があったという。日本の米のよさを生かした、もっちり、つるりとした麺を作り出している。