最新記事

グルテンフリーで世界を視野に 日本の米粉開発の最前線

2022年11月18日(金)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
米粉

米を粉砕してつくる米粉への期待が高まっている。Photo: iStock/Arisara_Tongdonnoi

<世界的に小麦の供給が逼迫する中、期待を寄せられているのが日本の「米粉」。実は、小麦粉価格高騰の前から需要は増加傾向にあったという。人気の要因にはグルテンフリー志向の広がりもある>

欧米圏のグルテンフリー志向を追い風に

日本では長年、米粉・米粉製品の開発が進められており、小麦アレルギーやグルテンアレルギーの人の食に活用されてきた。近年みられる米粉の需要増の背景には、主に欧米圏での「グルテンフリー」志向の広がりも大きい。小麦粉でつくられるパンや麺類が、米粉によって近い形で再現され、新たな食の楽しみが生まれることへの期待は高まる一方だ。

米は縄文時代に栽培が始まり、弥生時代には日本の一部で主食になっていたと考えられており、現在に至るまで日本の重要な主食である。しかし農林水産省の食料需給表によれば、米の消費量は、1962年の一人年間消費量約118.3キログラムをピークに下がり続け、2020年には1962年時の半分以下、50.7キログラムであった。一方、小麦消費量は1950年代以降ほぼ安定している。自給率100%が見込める数少ない農作物である米の消費拡大を目指す意図もあり、米粉普及の努力が続けられてきた。

2017年頃までは米粉の需要・生産は横ばいだったが、日本米粉協会によって、欧米のグルテンフリー基準であるグルテン含有量20ppmよりも厳しい、グルテン含有量1ppm以下を基準とするノングルテン米粉認証制度・ノングルテン米粉加工品登録制度が導入されたこともあり、2018年頃から米粉の消費量・生産量ともに増加。過去5年で1.8倍に拡大している。

tokyoupdates221115_2.jpg

ノングルテン認証を受けた米粉、ノングルテン米粉加工品登録をした加工品はこれらのマークを表示できる。Image: Courtesy of Japan Rice Flour Association

加えて、製粉技術が進歩して米粉の精製度が上がったことも消費拡大を促した。パンやケーキにも適した粉が作れるようになり、菓子・料理用、パン用、麺用と、用途別基準を定められるようになったことも大きい。

日本の短粒種米の米粉でフォーを

それまで米粉は和菓子やせんべいに使われるのが主な用途だったが、製粉技術向上に伴い米粉の加工品も進化してきた。2003年の創業以来、米粉を使った麺の製造に取り組んできたのが、東京都内に数店舗展開するベトナム料理店「チョップスティックス」だ。

tokyoupdates221115_3.jpg

チョップスティックスの定番メニュー、蒸し鶏のフォー。Photo: Courtesy of Chop Sticks

「日本のおいしい米で、世界一おいしい米麺を」を目標に開発を開始。東南アジアで生産される長粒種米から手作業で作るフォー(ベトナムの米麺)を、日本の短粒種米の米粉でコストを抑えつつ工場生産するのには非常に多くの苦労があったという。日本の米のよさを生かした、もっちり、つるりとした麺を作り出している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中