最新記事
高齢化社会

シニア男性の死亡リスク、独身は既婚より2~3倍高く 幸福感を左右する存在とは?

2022年10月27日(木)18時56分
杉田俊介(批評家) *PRESIDENT Onlineからの転載

「働くこと」が唯一の居場所であり社会的役割

NPO法人「老いの工学研究所」理事長の川口雅裕の記事「男性高齢者の充実度・幸福度が低い理由」によれば、人生のそれぞれの時期の発達課題をうまくクリアできず、老年期に幸福を感じにくいのは、次のような男性である。


・身体的な衰えを受け入れられない(嘆く、抗う)
・"稼ぎ手"以外の役割が見いだせない
・配偶者に依存しすぎている
・趣味や地域でのつながりが持てない
・社会貢献への意欲が乏しい
・高齢期にそぐわない住まいや周辺環境である

それまでの人生の中で女性たちは、会社での仕事=賃金労働以外にも趣味や地域活動、友人関係などで様々な役割を見いだしてきた。これは、政治や正規雇用の場から排除されているために、見いださざるを得なかった、という側面もあるだろう。

それに対し、仕事中心の男性は、会社への帰属を失うことが、そのまま、居場所や社会的役割のすべてを喪失することにつながりがちなのである。

高齢男性の幸福度や生活満足度が、就業者/非就業者という違いによって、ここまで大きく異なるのは、先進国では日本だけだという。

外との繋がりを大切にする人は幸福度が高い

ちなみに、これは高齢男性に関するデータではないが、東北新社が同社運営のサイト「家men」で実施した「家族を持つ男性の幸福度」に関する調査(全国の20~40代の、子どもを持つ既婚男性2444名が対象)によれば、家事をする時間がある程度長い男性の方が幸福度が高い、という結果が出ている。

杉田俊介『男がつらい!』(ワニブックスPLUS新書)また同調査では「家の中の事だけでなく、外との繋がりを大切にしている男性が幸福度が高い」と分析されている。

日本の高齢男性は、高齢女性に比べて、(仕事以外の)地域参加・市民参加の度合いが極端に低いことが他の調査でも指摘されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、トランプ関税発表控え神経質

ワールド

英仏・ウクライナの軍トップ、数日内に会合へ=英報道

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

米利下げ時期「物価動向次第」、関税の影響懸念=リッ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中