女性より男性が高リスク。目の寿命が尽きるAMDの一因「光環境の変化」とは?
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<60歳以上の高齢者の失明原因第1位、加齢黄斑変性(AMD)の発症には、遺伝と環境が関わっている。環境要因とは、食生活、タバコ、動脈硬化、血圧、そして光環境だ>
日本人の視覚障害の原因の第4位を占め、60歳以上の高齢者の失明原因では第1位。それが、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)。加齢などによって目の黄斑部(網膜の中心部分)に異常が生じる病気だ。
加齢黄斑変性(AMD)に代表される「網膜硝子体」の治療と予防の第一人者である聖隷浜松病院(静岡県)の眼科部長・尾花明氏は、光環境や食習慣が大きく変化している中で進行する高齢化時代に、生涯、視機能を保つためには意識的に眼の健康を気遣う必要があると言う。
中高年や加齢黄斑変性患者に向けて、加齢黄斑変性とはどのような疾患なのか、その最新治療や予防法について、自身の臨床経験や臨床研究成果を基に執筆したという尾花氏の新刊『「一生よく見える目」をつくる! 加齢黄斑変性 治療と予防 最新マニュアル』(CCCメディアハウス)より、3回にわたって抜粋する。
この記事は第2回。
※第1回はこちら:目は確実に老化する。白内障、緑内障、そして日本で近年増加中の「失明原因」とは?
加齢黄斑変性症(AMD)は増加の一途
AMD(加齢黄斑変性)は日本人のどれくらいの方に起こる病気かご存じでしょうか。
それを知るには、AMDの有病率を見る必要があります。病気の有病率はある地域の住民を母集団とした疫学研究で検討され、わが国では福岡県久山町の住民研究が有名です。
その結果を見ると、50歳以上でAMDを患っている人は、1998年には0.8%だったのが、2007年は1.3%、2012年には1.6%と、年を追うごとに増加しています。98年の時点で50歳以上の125人に1人、07年は80人に1人、12年は63人に1人がAMDだったということになります。
読者のみなさんのなかには、「小学生時代は1クラス50人だった」という方もいらっしゃるでしょう。つまり、現在ほぼ「クラスにひとり」の割合でAMDになっているということです。
残念ながら、ごく最近の有病率はまだ示されていませんが、2023年には総人口の50%が50歳以上になると予想されるので、そのときの人口を1億2000万人と仮定すると、AMD患者数は96万人となります。
このままでいくと、100万人に達する日もそれほど遠くありません。
男女別では男性に多く、2012年には50歳以上の有病率が男性2.2%、女性0.7%でした。男性が女性より3倍程度多いことがわかります。
ちなみに、AMDの有病率には人種差があります。大まかに言うと、白人は日本人の約2倍、黒人は約半分になっています。この人種差はAMDの発症要因を考えるうえで重要なポイントですので、後ほど解説します。