最新記事
医療

女性より男性が高リスク。目の寿命が尽きるAMDの一因「光環境の変化」とは?

2022年2月5日(土)16時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
夜中のスマホ使用

Yuji_Karaki-iStock.

<60歳以上の高齢者の失明原因第1位、加齢黄斑変性(AMD)の発症には、遺伝と環境が関わっている。環境要因とは、食生活、タバコ、動脈硬化、血圧、そして光環境だ>

日本人の視覚障害の原因の第4位を占め、60歳以上の高齢者の失明原因では第1位。それが、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)。加齢などによって目の黄斑部(網膜の中心部分)に異常が生じる病気だ。

加齢黄斑変性(AMD)に代表される「網膜硝子体」の治療と予防の第一人者である聖隷浜松病院(静岡県)の眼科部長・尾花明氏は、光環境や食習慣が大きく変化している中で進行する高齢化時代に、生涯、視機能を保つためには意識的に眼の健康を気遣う必要があると言う。

中高年や加齢黄斑変性患者に向けて、加齢黄斑変性とはどのような疾患なのか、その最新治療や予防法について、自身の臨床経験や臨床研究成果を基に執筆したという尾花氏の新刊『「一生よく見える目」をつくる! 加齢黄斑変性 治療と予防 最新マニュアル』(CCCメディアハウス)より、3回にわたって抜粋する。

この記事は第2回。

※第1回はこちら:目は確実に老化する。白内障、緑内障、そして日本で近年増加中の「失明原因」とは?

◇ ◇ ◇

加齢黄斑変性症(AMD)は増加の一途

AMD(加齢黄斑変性)は日本人のどれくらいの方に起こる病気かご存じでしょうか。

それを知るには、AMDの有病率を見る必要があります。病気の有病率はある地域の住民を母集団とした疫学研究で検討され、わが国では福岡県久山町の住民研究が有名です。

その結果を見ると、50歳以上でAMDを患っている人は、1998年には0.8%だったのが、2007年は1.3%、2012年には1.6%と、年を追うごとに増加しています。98年の時点で50歳以上の125人に1人、07年は80人に1人、12年は63人に1人がAMDだったということになります。

読者のみなさんのなかには、「小学生時代は1クラス50人だった」という方もいらっしゃるでしょう。つまり、現在ほぼ「クラスにひとり」の割合でAMDになっているということです。

残念ながら、ごく最近の有病率はまだ示されていませんが、2023年には総人口の50%が50歳以上になると予想されるので、そのときの人口を1億2000万人と仮定すると、AMD患者数は96万人となります。

このままでいくと、100万人に達する日もそれほど遠くありません。

amdbook-p19chart.png

『「一生よく見える目」をつくる! 加齢黄斑変性 治療と予防 最新マニュアル』19ページより

男女別では男性に多く、2012年には50歳以上の有病率が男性2.2%、女性0.7%でした。男性が女性より3倍程度多いことがわかります。

ちなみに、AMDの有病率には人種差があります。大まかに言うと、白人は日本人の約2倍、黒人は約半分になっています。この人種差はAMDの発症要因を考えるうえで重要なポイントですので、後ほど解説します。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ダボス会議でリモート演説・対話へ テー

ビジネス

現代自、競争激化で収益鈍化を予想 第4四半期17%

ビジネス

中国株式市場、保険会社が毎年数千億元を投入へ=証監

ワールド

プーチン氏、戦時経済の歪み認識 交渉によるウクライ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 8
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 9
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 10
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 4
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中