母となったTBS久保田智子の葛藤の訳と「養子」の真実
ONE AND ONLY FAMILY : A STORY OF ADOPTION
彼女の本音をもっと聞き、母親にも会いたい。そう思い、今年11月初めに村田親子を訪ねて大阪に向かった。大阪市内のホテルのロビーで2人に対面すると、会った瞬間から、「ああ、親子だ」と思わせる空気にのみ込まれた。
互いに突っ込みを入れながら話す、親子の屈託のない会話の中で、明子は小学生の頃を振り返り「特別養子縁組制度が何なのか、もっと早いうちから全部教えてほしかった」と訴えるように言った。勝手な「配慮」は要らなかったし、制度についての情報は全て教えてほしかった。
「実母」という言葉で語られる人が自分で育てられなかった事情を聞いてもいいことがなさそうだし、会いたいとも特に思わない。だが最近は、乳癌など遺伝性のある病気を持っているのか、どういう体形なのかなど、女性であるが故に気になることはある。
初めて聞く娘の率直な思いを、傍らの母親は神妙な面持ちで受け止めながらこう言った。「私はこれまでに、『生みのお母さん』という言い方をしたことは一度もない。明子にとってのお母さんは、私1人だけだから」
明子を育てる日々は「毎日がとにかく必死だった」という母親は、それでも数年前から里親制度で小学生の子供を育てている。「私は特別養子縁組という制度で親になることができた。この制度に恩返しがしたかった」という。50歳を過ぎてからの2度目の挑戦は、23年前の自分の選択を肯定するからこそ、なのだろう。
「養子」の真実と社会の理解
ここに興味深いデータがある。日本財団が16年に子供が15歳以上の特別養子縁組(回答全体の82%)と普通養子縁組(同18%)の家庭を対象に行った調査によると、「自分が今、幸せである」という幸福感は、養子のほうが一般家庭の子供の平均よりも高い(下図参照)。
また、子供を育てたことについて「とても良かった」と感じている養親は74.4%、「良かった」は21.2%、父母に育てられたことについて「とても良かった」と感じている養子は61.3%、「良かった」は29.1%と、ほとんどの親子が互いに家族になれたことを肯定的に捉えていることも分かった。