「賞味期限を過ぎたら食べられない」が間違いである根本的な理由
3.賞味期限は多少過ぎてもおいしく食べられる
賞味期限は、科学的な検査等で得られた「おいしく食べられる期限」よりも少し短めに設定されています。たとえば、製造日から120日間、おいしく品質にまったく問題ない製品であれば、120に安全係数として0.8をかけ算して96日後を賞味期限とする、という具合です。この場合、賞味期限後の24日間は、おいしく食べられます。その後、緩やかに風味等は落ちて行きますが、すぐに食べられなくなるわけではありません。安全係数として1未満のどんな数字をかけ算するか。その判断は事業者自身に任せられています。
ただし、卵の賞味期限だけは意味が異なります。卵の賞味期限は「生で食べられる期限」です。
卵は、サルモネラ菌汚染を完全にゼロにすることができず、内閣府食品安全委員会の調査研究では10万個中3個、サルモネラ菌を中に含む卵が見つかりました。しかし、菌数はわずかでした。
卵を冷蔵し賞味期限内であれば菌は中で増殖しておらず、生で食べても発症にはつながりません。しかし、賞味期限を過ぎると、その後は卵の中で少しずつ菌が増えて行くとみられます。菌を多く食べると食中毒になるため、期限を過ぎたら加熱して菌を殺してから食べるべきです。
菌が増えていても加熱すれば菌の害はないため、賞味期限が過ぎたからといって卵を捨ててしまう必要はありません。とはいえ、賞味期限を何週間も過ぎた、というような卵は×。期限が切れた卵はせいぜい1週間程度で加熱して食べきってしまいましょう。
それに、冷蔵していなければ菌の増殖は早まるため、保存は必ず冷蔵で。殻が割れると、中の菌が急速に増殖したり外から菌が入り込んだりしますので、殻が割れた卵は賞味期限にかかわらずすぐに加熱して食べましょう。
4.期限切れ販売=「法律違反」とは言えないが
食品の販売が禁止されるのは食品衛生法に違反する場合です。食品が衛生上の危害を及ぼすおそれがなければ、一律に禁止とはなりません。しかし、消費期限が付けられた食品は食品表示基準Q&A(加工‐38)により、「この期限を過ぎた食品については飲食に供することを避けるべき性格のものであり、これを販売することは厳に慎むべき」とされています。
一方、賞味期限については同じQ&Aで「期限を過ぎたからといって直ちに食品衛生上問題が生じるものではありませんが、期限内に販売することが望まれます」と記述されています。
同じように、製造・加工事業者が原材料として使ってよいかも判断されます。
Q&A(加工‐43)によれば、消費期限切れの食品を原材料として使用するのは「厳に慎むべき」とされています。賞味期限切れの食材使用については、「提供する製品の品質に問題がないことを科学的・合理的な方法で確認するとともに、その関係記録・帳簿等が保存されている」など、一定の条件を満たせば原材料として使ってもよいとされています。したがって、冒頭のバンダイナムコの件も、まったく問題なかった可能性があります。
最近、個人的に気になるのは、賞味期限切れの食品を安価で販売する店のこと。食品ロス削減の切り札として、テレビニュースなどでも取り上げられています。期限切れ1年以内の食品に限るとか、バイヤーが実際に食べたり飲んだりして品質を確かめるとか。
たしかに、多くの食品は賞味期限切れであっても問題ないのですが、食品の原材料や製法、それに容器等によって、品質がどの程度保たれるかはまちまちです。そして、非常に重要なのは保存方法。温度や湿度等によって食品の品質劣化のスピードは大きく変わるので、一括表示欄に、「要冷蔵(10℃以下) 」「直射日光を避ける」などと記載されます。期限が有効なのはこの保存方法を守って保管されていたときだけ。期限と保存方法は必ずセットでチェックされるべきです。
たとえば、日本缶詰びん詰めレトルト食品協会は「缶詰、びん詰、レトルト食品は賞味期限を過ぎたらどうなる?」というページを設けて、それぞれの特徴や保存方法を説明しています。