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「賞味期限を過ぎたら食べられない」が間違いである根本的な理由

2020年11月9日(月)17時30分
松永 和紀(科学ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載

1.まずは、消費期限と賞味期限を区別する

野菜などの生鮮食品には原則として期限は付けなくてよく、加工食品は消費期限か賞味期限を表示しなければなりません。

まず、どちらの期限がついているかを知るのが、食品の安全性を判断するうえで非常に重要です。

消費期限は、品質が急速に劣化する弁当や調理パン、そうざい、生ケーキや生和菓子等に付けられるもの。食べても安全な期限です。したがって、消費期限が切れた食品は食べないほうがよいのです。

一方、賞味期限はスナック菓子や即席麺類、缶詰など、比較的品質が劣化しにくい食品に付けられます。おいしく食べることができる期限なので、賞味期限切れであってもまだ食べられます。

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【図表】消費期限と賞味期限のイメージ 出典=消費者庁パンフレット

ところが、多くの人が消費期限と賞味期限を区別していません。よく「日付しか印字されてないよ」と言われます。そういう人は、パッケージの四角の線で囲った中をみてください。「一括表示欄」と呼ばれていて、重要な表示項目はこの中に書く、と決まっています。ここに、賞味期限か消費期限かが明記されています。

ただし、日付は欄外に書いてもよいことになっています。そのため、目立つところに印字された日付だけを見る人が少なくないのです。一括表示欄には保存方法も書かれていますので、まずはしっかりと見ましょう。

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カレー粉の期限表示。缶底の日付だけを見てもなんの期限かはわからない。しかし、一括表示欄に、賞味期限であることとどの場所に記載しているかが明記されている。清涼飲料水なども、日付が別記されている場合が多い

2.期限は、事業者自身が科学的根拠を基に設定する

食品の期限は、どのような食品か、どんな原材料を用いどのレベルの衛生管理で製造したか、なにで包装するか、何度で保存しているか等でまったく異なります。そのため、期限は製造や加工を行い包装する事業者が自らの責任で決めます。こうした細かい内容は、食品表示法に基づく食品表示基準やQ&A等により規定されています。

事業者は、微生物の変化を調べる「微生物試験」、食品が変質して栄養素が分解したり新しい物質ができたりしていないかなどを調べる「理化学試験」、味や風味などを人が食べて確認する「官能試験」なども行って、科学的根拠に基づいて消費期限や賞味期限を設定します。よく、「企業が決めた期限なんて信用できるわけがない。国が食品ごとに決めるべきだ」という人がいますが、その食品の細かい内容にもっとも詳しい企業だからこそ、期限を科学的に決められるのです。

また、輸入食品の場合には、日本に所在する輸入事業者が、製造加工業者から情報を得て期限を決定します。

たとえば豆腐は、数日で品質劣化し消費期限が付けられているもの、一定日数は品質を維持し賞味期限が表示されているもの、さらには常温で180日間日持ちするものまであります。それぞれの事業者が判断して表示しています。

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同じように店頭に並んでいる豆腐であっても、賞味期限が付けられているものと消費期限が表示されているものがある

牛乳も、消費期限が付いているものと賞味期限が付いているものの二通りあります。

殺菌方法によって異なるのです。多くの牛乳で取り入れられている「超高熱瞬間殺菌」(UHT)は120~150℃で1~3秒加熱するもの。このタイプの牛乳には賞味期限が付けられています。

一方、63~65℃で30分間加熱する「低温保持殺菌」の牛乳に付けられるのは消費期限。低温なので、超高熱瞬間殺菌ほどの殺菌効果がなく悪くなりやすく、消費期限が付けられているのです。

どちらの期限かは牛乳の場合、日付の横に明記されています。

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「自然」「おいしい」などと賛美されることが多い低温殺菌牛乳だが、悪くなりやすいため消費期限が表示されている

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