映画『異端者の家』──脱出サイコスリラー主演、ヒュー・グラントが見せるイメージを覆す圧倒的な存在感
Moving to the Dark Side
そうして彼は、捕らわれの身となった若い2人に宗教団体の歴史についてのレクチャーを始める(オンライン掲示板を数時間スクロールした程度の知識だが)。
その合間にも、ロマコメ時代のグラントを知る人ならすぐにそれと分かるしぐさがちりばめられている。少し申し訳なさそうに、目を細めてニヤリと笑うしぐさ。まるで「こんな私を憎めるかい?」とささやきかけているようだ。
『異端者の家』でのグラントの演技は、ロマコメとホラーの間に私たちが想像するほどの大きな違いがないことを示唆している。
おっちょこちょいなロマコメの主人公同様に、ホラー映画の悪役もしばしば弱い人間を装って、相手が警戒を緩めるのを待っている。そしてグラントはホラー映画の悪役を演じることで、ロマコメ時代の自分のファンにちょっとした衝撃を与える機会を楽しんでいるようだ。
本作のプレミア上映の際、ミスター・リードのような役から抜けるのは難しかったかと問われたグラントは「まだ抜け切れていない。今日も3人殺してきた」と答えると、ウインクしながら冗談めかしてこう続けた。
「今は罪の意識にさいなまれているがね」
HERETIC
『異端者の家』
監督/スコット・ベック、ブライアン・ウッズ
主演/ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー
日本公開は4月25日