最新記事
映画

映画『異端者の家』──脱出サイコスリラー主演、ヒュー・グラントが見せるイメージを覆す圧倒的な存在感

Moving to the Dark Side

2025年4月28日(月)09時42分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)

ある意味、この作品で俳優ヒュー・グラントは生まれ変わったと言える。若き日の単なる二枚目俳優から、年輪を重ねて人生の表も裏も演じ分けられる役者になった。

かつては「アメリカの恋人」とまで呼ばれたグラントだが、今はすっかり悪役が板に付いている。

23年の『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』では昔の仲間を裏切る冷酷な盗賊を演じ、同年の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』では緑色の髪にオレンジ色の肌で無表情なウンバルンパを怪演した。どちらの作品も大ヒットしたが、それは今や観客が「悪役」グラントを愛していることの証拠だった。


『異端者の家』で演じたミスター・リードもまた、今のグラント(この秋には65歳になる)が当代一の愛すべき悪役であることを前提としてキャスティングされている。

この男、見たところは無害な老紳士だ。自宅を訪れた若い女性信徒のバーンズ(ソフィー・サッチャー)とパクストン(クロエ・イースト)を迎え入れ、妻は別の部屋でパイを焼いているところだと言って安心させる。

実は妻などいないことに2人が気付く頃には、もう逃げ場はなくなっている。「君たち、もう生きて外には出られないかもね」と告げつつ愛嬌を振りまくミスター・リード。まだら模様のカーディガンに薄いオレンジ色の眼鏡、ぼさぼさ頭という風貌だが、自信たっぷりで、絶対に人から憎まれない(だってヒュー・グラントだから)と信じている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペイン・ポルトガルで大規模停電、市民生活混乱 原

ワールド

BRICS外相会合、トランプ関税の対応協議 共同声

ワールド

ウクライナ、米と可能な限り早期の鉱物協定締結望む=

ワールド

英、EUと関係再構築へ 価値観共有を強調=草案文書
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中