人間の体は搾取してリサイクルする有機物の塊...ポン・ジュノ監督最新作で「今ここにあるディストピア」へようこそ
A Dystopia for Our Times
本作は何よりも、21世紀資本主義の風刺劇として優れている。ミッキーが死に続ける世界は、価値抽出の経済に徹底的に支配されている。異星は略奪のためにあり、在来生物は排除すべき障害で、人間の体は搾取してリサイクルする有機物の塊にすぎない。
耐えられないほど残酷になりかねない作品を救うのは、根源的なヒューマニズムだ。すっかり見慣れたディストピアの虚無主義の残骸から、鋭い真実が立ち現れる。重要でない命はない。生きている者は痛みや恐怖を感じ、本能的に生き続けようとする。あらゆる存在が単に生存するのでなく、幸せに生きられるような社会秩序を作るのが人類の倫理的義務だ、と。
結末では希望の光が見え、ユートピアの可能性が顔を出す。その新たな世界では、16回も苦しんで死んだ男でも、別の人生に踏み出すことができる。はかなくて、一度きりで、ほかの誰のものでもないからこそ、意味のある人生に。
MICKEY 17
『ミッキー17』
監督/ポン・ジュノ
主演/ロバート・パティンソン、マーク・ラファロ
日本公開は3月28日