パレスチナ人とイスラエル人の監督による異色の映画...アカデミー賞最有力『ノー・アザー・ランド』とは?
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イスラエルによる住宅破壊が進むパレスチナ人居住地区で撮影された本作は住民の抵抗と人間としての姿を描き、ドキュメンタリーの力を問う ©2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA
<イスラエル軍のブルドーザーが家や学校を破壊するのは恐ろしいけれど「見慣れた光景」だ。賞レース総なめもアメリカでの配給が決まらない、ドキュメンタリー映画が描く不都合な真実──(米誌記者レビュー)>
ドナルド・トランプ米大統領の衝撃の「ガザ所有」発言がもたらした最も重大な結果とは、到底言えない。だが今や、はっきりしたことがある。今年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞する作品は、ほぼ決まりだ。
パレスチナ自治区ガザから住民約200万人を追い出して、アメリカがリゾート開発する。そんな構想をトランプが表明したのは2月上旬だ。スレート誌コラムニストのフレッド・カプランによれば、「米大統領による史上最も異常な中東問題発言」だった。
それ以前から『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない(No Other Land)』は長編ドキュメンタリー賞の最有力候補と見なされていた。
2019~23年にヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区マサーフェル・ヤッタで撮影した本作は、イスラエル当局による住宅の破壊に抵抗するパレスチナ人の姿を鮮烈に描き、高く評価されていた。
とはいえ、もはや疑問の余地はない。今年のアカデミー賞の最多部門候補作『エミリア・ぺレス(Emilia Pérez)』は、主演のトランス女性俳優の過去の人種差別発言が判明し、トランプ政権への抗議の意思表示として選ぶのが難しくなった。
ならばなおさら、『ノー・アザー・ランド』に賞を授与するのが、世界にメッセージを発する上で最も明快な選択肢だ。
その決断には、皮肉も付きまとう。昨年の受賞作『マリウポリの20日間(20 днів у Маріуполі)』と同様、ドキュメンタリーの効果を疑問視し、不正義を広く知らしめることが変化を生むという考えを疑ってかかる作品が賞に輝くことになるのだから。
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