最新記事
映画

パレスチナ人とイスラエル人の監督による異色の映画...アカデミー賞最有力『ノー・アザー・ランド』とは?

Watch, Be Touched, and Then?

2025年2月28日(金)18時09分
サム・アダムズ(スレート誌記者)

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない(No Other Land)』場面写真

©2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

本作の監督はパレスチナ人のバーセル・アドラー(Basel Adra)とハムダーン・バラール(Hamdan Ballal)、イスラエル人のユバル・アブラハーム(Yuval Abraham)とラヘル・ショール(Rachel Szor)の4人。

イスラエル軍のブルドーザーが住宅や学校を破壊する、恐ろしいほど見慣れた光景を撮影し続けるなか、彼らは自分たちの行動の意味を議論する。


アドラーは、09年に中東和平特使のトニー・ブレア元英首相がガザを初訪問したときを振り返り、取材陣が押し寄せたその注目度が当時のイスラエル政府に取り壊し計画を思いとどまらせたと語る。

だが、ウィキペディアの中東問題関連ページを編集するだけで身の破滅になりかねない現在、主流メディアの多くは及び腰の中立を選び、それに応じて米国民の関心も低下している(本作の撮影終了後、23年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃して以来、同地域に入るのはさらに危険になった)。

ある場面では、アドラーの隣人がイスラエル軍兵士と口論になり、銃撃される。調査ジャーナリストでもあるアブラハームは事件について記事を書くが、「アクセス数が少ない」とアドラーに嘆く。

親子2代にわたって抵抗活動をするアドラーはアブラハームの焦りをたしなめる。ある記事が拡散するだけで、中東問題の力学が変化することはあり得ない(あるドキュメンタリー映画が賞を取ろうと、同じことだ)。「失敗に慣れろ」と。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中