モルモン教徒vs米政府...ダークで血みどろな西部劇『アメリカ、夜明けの刻』が描く「負の開拓史」
A Dark Time in Morman History

お尋ね者のサラは息子と西部へ JUSTIN LUBIN/NETFLIX
<「白人開拓者vs先住民」の構図がフィーチャーされがちな西部開拓物語とは一味違う。宗教対立の視点を取り入れた暴力描写たっぷりのNetflix西部劇──(ネタバレなしレビュー)>
ネットフリックスのドラマ『アメリカ、夜明けの刻(とき)(American Primeval)』は暗いムードの西部劇だ。
南北戦争前の時代、現在のユタ州とワイオミング州南部に当たる地域で起きた抗争を描く全6話の本作は、映画『レヴェナント:蘇えりし者(The Revenant)』(2015年)で知られる脚本家マーク・L・スミス(Mark L. Smith)が、クリエーターと脚本を手がけている。
新旧の多くの「西部もの」と同様、『夜明けの刻』は流血と銃と死の連続だ。制作陣が目指したのは、厳しく無慈悲な世界をつくり出すこと。
音響効果担当者が米メディアで語ったところでは、効果音から鳥の鳴き声を削除するよう、監督のピーター・バーグに指示されたほどだという。
ネットフリックスの宣伝資料によれば、このドラマが数ある西部ものとひと味違うのは、あることを教えてくれるから。米開拓時代の西部は混乱の極みだった、と。
過剰なほど盛りだくさんのストーリーは、1857~58年に末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)信者と米政府軍の間で発生したユタ戦争当時の出来事に、おおまかに基づいている。
主人公の1人で、ベティ・ギルピン(Betty Gilpin)が演じる堅苦しい雰囲気の女性サラは息子(プレストン・モタ)を連れて西部へ旅している(この息子が手にしている小説が、同じく19世紀の厳しい時代を生き抜こうとする人々を描く『デイヴィッド・コパフィールド(David Copperfield)』なのは気の利いた演出だ)。
テイラー・キッチュ(Taylor Kitsch)扮するアイザックは渋々ながら、サラ親子の道案内を務めることになる。この3人に先住民族ショショーニの少女が加わった一行の後を、実はお尋ね者であるサラの首を狙う賞金稼ぎが追っている。