幼い子供には「恐ろしすぎる」かも? アニメ映画『野生の島のロズ』は「心」を見つけたロボットを描く傑作だが...
An Intelligence Beyond AI
生々しい死の描写はないが、生物間の捕食は何度も当たり前のように、時にはコミカルに取り上げられる。オポッサムの子供たちは古代ギリシャ劇の合唱隊よろしく、自分たちのような小さな哺乳類は常に死の危険と隣り合わせなのだと何度も訴える。
この映画の生態系において食べられるのは食べるのと同じ、命の一部なのだ。
ロボットが動物の世界に適応していく過程も自然。ロズは内蔵のソフトウエアと新たに見つけた心の力の両方を使って、仲間を助ける方法を模索する。テクノロジーに否定的な寓話を期待して見る人は、機械と自然が共生するユートピアの世界観に驚くだろう。
自然と技術の共生を考察
製作したドリームワークス・アニメーションの作品を含め、近年は立体的な3Dアニメが主流。一方『野生の島のロズ』は昔ながらの2Dに近いビジュアルが特徴だ。
絵筆で描いたような島と生き物たちの中で、最初ロボットのメタリックな質感は浮いている。だが壊れた脚をビーバーがかじった丸太と交換するなどしてロズの「野生化」が進むにつれ、画風は微妙に変わり、金属の体は周囲の緑や毛皮になじんでいく。
同様に、ロズの声を担当したニョンゴの演技も微妙に変化する。Siri(シリ)やアレクサを思わせるそつのない合成音声から、戸惑いながらも生きることの不確かさと驚異に心を開いていく生き物の口調へと変わる。