「50-50」を達成しても挑戦を続ける大谷翔平、今季見せた2つの新たな側面とは

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2024年10月4日(金)17時28分
スコット・ミラー(MLB専門スポーツジャーナリスト)

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走塁の激しさが増したことが今季の盗塁増につながった(8月3日) THEARON W. HENDERSON/GETTY IMAGES

異例ずくめの状況で開幕を迎えた大谷だったが、この夏の活躍は最優秀選手(MVP)候補と呼ぶにふさわしいものだった。打撃や走塁、勝負強さはもちろん、スター選手のムーキー・ベッツが6月に左手の骨折で戦線離脱して以降は、ごく自然に1番打者の代役を務めてチームを支えた。

1番打者としていい仕事をしたことで、8月にベッツが復帰した後もドジャースは打順を戻さず、ベッツは大谷がいた2番に入った。

「彼は自分の前に置かれた目標を全て達成してしまう」と、ニューヨーク・メッツの遊撃手で今年のナショナルリーグのMVPを大谷と争っているフランシスコ・リンドアは言う。

「あれだけのものを背負った状態で開幕を迎えたというのにね。ものすごく頭がいいことが分かるし、どんな日も万全の態勢でプレーに臨んでいるんだろう。肘のけがもあるのに、すごい仕事ぶりだよ」


投手・大谷の活躍こそ見られないものの、私たちは今シーズン、彼の新たな側面を2つも目の当たりにしている。

1つ目はロバーツもリンドアも言及した、とてつもないレベルの知力と、それが生み出す超人的とも思えるメンタルの強さ。

2つ目は盗塁のたびに見せつけられるスピードと走塁に対する勘の鋭さだ。こちらについては来シーズン以降はお目にかかれないかもしれない。

今シーズンの大谷のパワーは打撃に集中できているおかげだと考える人は多い。その一方で、マウンドに立てない分、大谷の走塁が激しさを増している点に注目すべきだという見方もある。

「今年は投手をやっていないから、その分(打撃や走塁で)タンクを空にしているのだと思う」と、ロバーツは言う。

「二刀流であっても、パワーや出塁率や打率は同じレベルを実現できるだろう。OPS(出塁率と長打率を足した数値)もほとんど変わらずにやれる。でも盗塁だけは、そうはいかないのではないか」

夏のさなか、盗塁数が24に達した時点で、大谷の走塁には大きな注目が集まっていた。

例えばフロリダ・マーリンズ(当時)などで監督を務め、この夏に野球殿堂入りしたジム・リーランドは私にこう語った。「あんなもの(盗塁)はこれまで見たことがない。今年は投げていないにせよ、投打の両方をやっているのに」

「でも大谷について最も印象に残るのは、あれだけ大柄なのに走り方が優雅なこと。そこがすごく驚きだ」


 ❝SHOHEI QUOTE_03❞
いや、特にびっくりはしなかった
(6月5日、パイレーツのスキーンズ投手から第1打席に3球連続ストレートを投げられて)

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ドジャース地区優勝と初の「50-50」を達成した大谷翔平をアメリカはどう見たか

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