「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界で愛される「これだけの理由」

WHY ANIME IS LOVED THROUGHOUT THE WORLD

2024年5月1日(水)14時10分
数土直志(すど・ただし、アニメーションジャーナリスト)

newsweekjp_20240501032130.jpg

アジアで人気が高い新海誠 JOSHUA BLANCHARD/GETTY IMAGES

後にフランス大統領選にも出馬する政治家セゴレーヌ・ロワイヤルらは、日本のアニメやマンガはエロとバイオレンスに満ちていると主張し、結果として日本のアニメのテレビ放送が一気に減ることになった。

中国でも00年代初めに『テニスの王子さま』『鋼の錬金術師』などの人気が盛り上がったが、00年代半ば以降はテレビ放送の新たな番組許諾が全く下りなくなり、人気は下火になった。

再び盛り上がるのは、10年代になって動画配信サイトが正規配信を始めてからだ。こうした規制は今でもあり、表現規制の強まっている中国では、近年、現地で上映や配信ができない日本アニメが増えている。過去数年で日本アニメへの規制が緩和された中東でも、同性愛表現は厳禁だ。

さまざまな表現に果敢に挑戦することが日本のアニメの強みの1つだけに、こうした規制が今後強まるかどうかは制作側にとっても気になるところだろう。

ビジネスでの成功が追い風に

近年の日本アニメにとっての成果は、長年の課題だったビジネス面での成功だ。関係各社の海外売り上げが大きく伸びている。

かつては作品の人気に比べると、日本が得られる利益が少ないとされていた。アニメを販売する各社が海外で大きく儲かったとの話もあまり聞かなかったし、日本のアニメスタジオの多くは中小企業のままだ。

それはアニメビジネスの形態によるところも大きかった。かつてのアニメビジネスは、国・地域それぞれの配給会社に、定額でその国・地域の権利を販売して終わりだ。番組を購入する現地企業の大半が映像会社だから、関連グッズなどの商品展開もない。日本のような2次展開のビジネスは期待できなかった。

さらに大きな問題は、海賊商品だ。ひと昔前のアニメに詳しいファンなら、海外で日本アニメと言えば海賊版を思い浮かべる人もいるだろう。00年代末頃まで、日本アニメの海賊版はリアルにもネット上にも世界中にあふれていた。

筆者は00年代半ばに訪れた上海で、ビル1棟を丸ごと使って海賊版を売っている店を見つけて驚愕した。道路の端から端まで海賊版の露店という光景も目にした。そこではDVDはもちろん、グッズからコスプレの衣装まで、全て海賊版といった状況だ。

中国だけでなく、どこの国も似たような状況だった。アメリカやフランスなどで開催される大きなアニメイベントの会場は、海賊商品のショップが大にぎわいだ。

海賊版があふれた理由は価格の安さもあったが、むしろ十分に正規品を供給できていないことだ。ビデオソフトですら発売は日本よりも何年も遅れ、商品のラインアップは限られ、それさえどこで買えばいいか分からない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米フォード、国内で値下げを計画、潤沢な在庫を活用

ビジネス

日本のインフレ率は2%で持続へ、成長リスクは下方に

ビジネス

三菱商事、26年3月期に最大1兆円の自社株買い 年

ワールド

韓国、関税巡り米当局者との協議模索 企業に緊急支援
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中